279: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:30:23.99 ID:8mPTevMeO
佐藤「そう、大量虐殺する」
予想だにしていなかった佐藤の提案に、再集合した一同はそろって息を飲み、沈黙した。佐藤の声音はさっきまでの落ち着きを保ったままで、その選択がさも当然のことであるかのように話を続ける。
280: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:31:40.28 ID:8mPTevMeO
佐藤に問いかけられた中野は、怯えたように唾を飲み込んで額から汗を滲ませていた。まさかテロへの参加を呼びかけられるとは夢にも思っていなかったからだ。
中野「反対です」
281: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:33:25.83 ID:8mPTevMeO
空気が噴出するような音がしたのと、中野が秋山の膝裏を蹴ったのはほぼ同じタイミングでのことだった。秋山の膝がくの字に折れ、体勢が崩れる。次の瞬間、中野と秋山のあいだを麻酔ダートが飛んでいった。麻酔ダートは眼鏡をした亜人の背中に突き刺さり、中野は倒れたその男に駆け寄って「平気か!?」と大声をかける。
ガンガン、と換気口のルーバーを何度も蹴りつける音がする。秋山が音のするほうを見ると、ルーバーの固定部が外れ、内側から蹴り飛ばされた。換気口の中には田中が潜んでいた。ガス式のダートライフルをぴったりと身体に引き寄せてスペースをつくり、コルトM1911を握った右手を秋山たちに向けて突き出している。
282: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:34:59.47 ID:8mPTevMeO
部屋の中では、銃撃の瞬間に壁に飛びすさった高橋とゲンが息を喘がせている。動揺しているが、同時に興奮しているのか二人とも口の端が上向いている。
田中は逃げた二人を追おうとするが、ノブがガチャガチャいうだけでドアは開かない。
283: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:36:18.76 ID:8mPTevMeO
ロッカーの位置を調節し終えた秋山と中野が、ドア越しに佐藤の声を聞いた。
秋山「聞いただろ。監禁されるだけだ。行くぞ!」
284: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:37:49.61 ID:8mPTevMeO
秋山と中野は必死に走り続けている。建設途中で放棄されたホテルには表記がなく、どこもかしこも区別がつかずまるで迷路のようだ。二人は外縁にあたるであろう方向に走りまくった。脚を激しく回転させるのと同じように、曲がり角があれば首を左右に動かし脱出のための経路を探る。
秋山「窓があるぞ!」
285: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:38:54.07 ID:8mPTevMeO
湿気混じりのムワッとした暑気が入り込んでくる。二人は纏わりつこうとする暑気を突き抜けるように、窓から身を乗り出して下を覗き込んだ。地上八階の高さ。亜人といえども思わず躊躇する。
中野「コッ……ココから降りるのかよ!」
286: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:42:08.56 ID:8mPTevMeO
秋山がそう叫んだ直後、二本の銛が秋山の身体を貫いた。ワイヤーが巻き取られると、秋山は後ろへ引っ張られて廊下の床へ倒れ落ちる。銛そのものも、秋山が引っ張れていくと、滑るように身体から引き抜かれそうになったが、先端にある返しが肉に引っかかり食い込んで、銛が抜けてしまうのを防いでいる。
中野「おじさん!」
287: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:43:45.19 ID:8mPTevMeO
あまりにも突然のことに、中野は笑いの発作が起こったかのように息を吐いた。そのあいだにも握った手を懸命に引っ張り続けているが、秋山の身体を窓の外へ運ぶことができない。手の感覚が消えて、腕が震えを見せはじめている。
秋山「おまえがどうにかしろ! もう、おまえにしか止められない!」
288: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:44:52.97 ID:8mPTevMeO
頭部から三角錐のような五つの角が、上に向かって伸びている黒い幽霊が両拳を身体の前で構え、脇を締め腰を落とし、ファイティングポーズをとる。秋山はワイヤーを腕に巻きつけながら、門番のように窓の前に背中を預け陣取った。
IBM(田中)『お゛お゛お゛』
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