287: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:43:45.19 ID:8mPTevMeO
あまりにも突然のことに、中野は笑いの発作が起こったかのように息を吐いた。そのあいだにも握った手を懸命に引っ張り続けているが、秋山の身体を窓の外へ運ぶことができない。手の感覚が消えて、腕が震えを見せはじめている。
秋山「おまえがどうにかしろ! もう、おまえにしか止められない!」
秋山の握力も限界に近づいている。激痛と出血のため、普段からの訓練によって築き上げてきた立派な肉体からでも力は失われつつある。このままでは共倒れになる。それだけは絶対にできない。
秋山「絶対にやり遂げろ、行け、行け!」
中野の呼吸が、数瞬止まる。永遠にも等しい刹那が過ぎ去り、中野は息を吸い、秋山に答える。
中野「わ、わかった」
中野は意を決して手を離す。身体を反転させ、窓の外へと向かう。
田中「少し左……」
ライフルのスコープを覗き込みながら、田中は奥山の助言を思い出す。アドバイスに従って銃身の僅かに左にずらす。立ち上がったことで、標的は狙いやすくなっている。田中は引き金を引いた。麻酔ダートは背を向ける中野めがけて真っ直ぐ飛んでいく。無防備な背中に麻酔ダートが突き刺さる数瞬前、黒い手が麻酔ダートを受け止め、握り潰した。
秋山「おまえの相手はおれだぁ……」
苦悶が混じった声で、秋山は田中に応戦を告げる。黒い手がもう一つ形成される。
秋山「馬鹿野郎!」
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