新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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288: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:44:52.97 ID:8mPTevMeO

頭部から三角錐のような五つの角が、上に向かって伸びている黒い幽霊が両拳を身体の前で構え、脇を締め腰を落とし、ファイティングポーズをとる。秋山はワイヤーを腕に巻きつけながら、門番のように窓の前に背中を預け陣取った。


IBM(田中)『お゛お゛お゛』


田中もまた黒い幽霊を発現させる。四足獣のように身体を低くしながら、長い爪を床に突き刺し、ぞっとするような速さで黒い幽霊は秋山と中野へ接近する。秋山の黒い幽霊が拳を固くし、腕を引く。中野は縁に立ち、地上を見下ろす。


中野「マジかよ」


黒い幽霊同士が衝突するまさにその瞬間、中野は窓から跳んだ。飛び降りるとき、中野はなぜか眼を閉じなかった。下から吹いてくる空気の流動、落下の感覚と景色の流転に、中野は眼を閉じておけば、と瞬時に後悔する。だがそれも一瞬の感情として終わる。死の暗闇、感じることのできない暗闇がやって来て、次の瞬間には地上にいた。中野は盲滅法に全力で走り出す。森の中に入り、五分ものあいだ足を止めず、全力疾走を続ける。体力が底をつきると、苦しげに激しく呼吸をしながら、汗まみれの顔を後ろへ向ける。秋山がいるはずの建物は、森の木々に遮られ、上階の部分しか見えなくなっている。


田中「逃げ足の速い野郎だな」


田中は中野を見失っていた。窓から首を出しても見えるのは森ばかりで、動くものは空にいる鳥くらいしかいない。


秋山「田中……」


秋山の声はいまにも息絶えそうな調子がにじんでいた。身体には斜めに深い裂傷が走り、秋山自身は床に広がる血の中に身体を横たえている。




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