勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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80:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:47:40.12 ID:09+TUdRc0
僧侶「ううう…! うぐ…ふぐ…!!」

 子供のように泣きじゃくりながら、僧侶は勇者に回復呪文をかけ続ける。
 彼女は知っている。勇者が痛みを病的なまでに嫌っていることを。
 彼女は思い知っている。それでも勇者は、いざという時には他人の為に自分を犠牲にしてしまうことを。
以下略 AAS



81:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:48:41.23 ID:09+TUdRc0
 雷が落ちる。
 既にその数は十を超えている。
 二人の男はもはや声を上げもしない。
 ただ歯を食いしばり、耐え凌いでいる。
 目の前の男が先に倒れるのを待っている。
以下略 AAS



82:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:49:13.61 ID:09+TUdRc0
勇者「『呪文・大雷撃』ッ!!!!」

 失いそうになる意識を必死でつなぎ止めながら、勇者は叫ぶ。
 新たな雷が己の体を打った。直後に、僧侶の回復呪文が飛んでくる。
 それによって痛みは多少マシになる―――が、すぐに新しい雷が体を打つ。
以下略 AAS



83:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:50:05.27 ID:09+TUdRc0


 高名な父の元に生まれ、ただその跡継ぎとしての人生を求められた

 『世界を救う』なんて大役を周囲から押し付けられて生きてきた
以下略 AAS



84:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:50:42.06 ID:09+TUdRc0


 あっさりと自分の真逆の道を行く奴が目の前に現れた


以下略 AAS



85:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:51:12.44 ID:09+TUdRc0
勇者「騎ィィィィィ士ィィィィィイイイイイイイイイ!!!!!!!」

騎士「勇ゥゥゥゥゥ者ぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!」

 一際眩い雷光が二人の体を貫いた。
以下略 AAS



86:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:51:50.46 ID:09+TUdRc0
騎士「クッソ…! 離せぇッ!!」

 騎士は己の腕を掴んで剣を固定する勇者の体を必死で蹴り飛ばした。
 十全の状態の騎士ならば、それだけで勇者の体を爆散させることも可能だっただろう。
 だが今は、二度の蹴りでようやく勇者の体から剣を引き抜くのがやっとという有様だった。
以下略 AAS



87:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:52:49.07 ID:09+TUdRc0
 騎士は一度勇者に対して精霊剣・湖月を構えたが、ふっ、とその顔に笑みを浮かべると剣を下ろした。

騎士「参ったぜ、勇者。俺の負けだ」

 そう言って、騎士はその場に座り込んでしまった。
以下略 AAS



88:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:53:30.80 ID:09+TUdRc0
 勇者が真打・夜桜を一閃する。
 騎士も応じて、精霊剣・湖月を振った。
 勇者の胸が切り裂かれ、血が噴き出した。
 騎士も同じ場所に傷を負い、仰向けに倒れる。
 互いに致命傷だ。
以下略 AAS



89:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:54:11.77 ID:09+TUdRc0
 後日談。
 勇者が提案したこの一大作戦によって、魔王討伐は為された。
 勇者達が騎士を抑え込んでいる間に、魔王城に潜入した各国の精鋭が見事魔王討伐を成し遂げたのだ。
 無論、かつての『伝説の勇者』の一件を経て、人々は『大魔王』の存在を知っている。
 だから、決して手放しで喜べることではないが―――世界はつかの間の平和を手に入れたのだ。
以下略 AAS



90:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:55:48.12 ID:09+TUdRc0
 勇者は『滅びた国』の正門から町の中を覗き込んだ。
 とある家の中から、年若い少年少女の手によって死体が運び出されていた。
 死体は車輪のついた台車に乗せられ、町の奥へと運ばれていく。
 恐らく町の奥に共同墓地の類を設けているのだろう。
 孤児院で院長が言っていた『作業』とはこのことだった。
以下略 AAS



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