勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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87:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:52:49.07 ID:09+TUdRc0
騎士は一度勇者に対して精霊剣・湖月を構えたが、ふっ、とその顔に笑みを浮かべると剣を下ろした。
騎士「参ったぜ、勇者。俺の負けだ」
そう言って、騎士はその場に座り込んでしまった。
実際、もう立っているのもやっとという状態なのだろう。
そんな状態で、騎士は勇者に気さくに話しかけてきた。
まるで、酒場で友として語り合ったときのような気安さで。
そんな二人の様子を、戦士は遠巻きに眺めていた。
騎士が何か妙な動きをすれば即座に動けるように、油断なく。
もちろん、真に万全を期すならすぐに勇者のもとに駆け寄って、騎士にとどめを刺すべきだろう。
だけど、戦士はそうしなかった。
それは、同じように様子を見ている僧侶も武道家も同様だった。
皆、騎士との決着は勇者がつけるべきなのだと、そう思っていた。
騎士「なあ、勇者。命だけは助けてくれないか?」
いくらかの会話を終えた後、騎士はそう切り出してきた。
騎士「この戦いを通して分かったよ。お前は正しい、間違っていたのは俺だってな。今後は俺も心を入れ替える。な? 頼むよ、勇者」
騎士「湖月もお前が使ってくれていい。お前がもし大魔王に挑むなら、俺はお前の右腕として忠実に働くことを誓う。どうだ? 悪い相談じゃ無いはずだぜ?」
勇者はじっと騎士の目を見つめていた。
騎士も、目を逸らさず勇者を見ていた。
勇者はふぅ、と大きなため息をつく。
勇者「そうだな。そうなればどんなにいいかと俺も思う。俺とお前なら、きっとどんな奴が相手だって後れを取ったりはしないだろう」
騎士は勇者の言葉に口を挟まず、黙ってその先を待っている。
勇者「だけど、万が一のことを考えたら――――――いや、」
勇者は言葉を切り、言い直した。
その顔には、笑みが浮かんでいる。
勇者「お前さ―――――絶対裏切るだろ?」
騎士「流石勇者だな。俺のことを、本当によくわかってる」
答える騎士も、やっぱり笑っていた。
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