勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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86:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:51:50.46 ID:09+TUdRc0
騎士「クッソ…! 離せぇッ!!」
騎士は己の腕を掴んで剣を固定する勇者の体を必死で蹴り飛ばした。
十全の状態の騎士ならば、それだけで勇者の体を爆散させることも可能だっただろう。
だが今は、二度の蹴りでようやく勇者の体から剣を引き抜くのがやっとという有様だった。
戦士「ああああああああ!!!!!!」
騎士「な、めんなコラァ!!!!」
小細工なしで大上段に斬りかかってきた戦士を迎え撃つため、騎士は己の足に力を込める。
ぐらり、と膝が笑って体勢が崩れた。
繰り返された『呪文・大雷撃』のダメージは、確かに騎士の体に蓄積されていた。
戦士の剣が振り下ろされ、地面に膝をついてしまっていた騎士は体勢を立て直すのが間に合うはずもなく、ただ我武者羅に回避のために身を捩る。
湖月を握りしめていた騎士の右腕が宙を舞った。
騎士「……うらぁ!!!!!」
死力を振り絞り、騎士は残った左手で戦士を殴り飛ばした。
右腕を失ったことで体のバランスを著しく欠いた騎士はもんどりうって倒れそうになる体を必死になって立て直す。
そこへ間髪入れず武道家が襲い掛かった。
精霊甲・竜牙の肘部分から飛び出した槍の穂先のような刃物―――スピアが騎士の胸に突き立つ。
騎士「ごふ……う、おおおおお!!!!!!」
騎士は武道家の襟首を掴み、顔面に思い切り頭突きを放った。
そのまま左腕一本で武道家の体を投げ飛ばす。
騎士「ふぅ…ふぅ…ッ!!」
騎士は喉奥からせり上がってくる血の塊を飲み下す。
だが、根元から右腕を切られた肩と武道家に貫かれた胸の傷からの出血が夥しく、どの道すぐに血が足りなくなるのは目に見えていた。
騎士は地面に落ちていた自分の右腕から、精霊剣・湖月を拾う。
その時、さく、と草を踏む音が背後から聞こえた。
振り返る。
勇者だ。
真打・夜桜をその手に持った勇者が立っていた。
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