勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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85:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:51:12.44 ID:09+TUdRc0
勇者「騎ィィィィィ士ィィィィィイイイイイイイイイ!!!!!!!」

騎士「勇ゥゥゥゥゥ者ぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!!」

 一際眩い雷光が二人の体を貫いた。

勇者「ぐうううううううう!!!!!」

騎士「ぬうあああああああ!!!!!」

 これまでで最大級の威力に、勇者と騎士は歯を食いしばって耐える。

勇者(これでまだ倒れねえのかよ、化け物め!! お前一体何発この呪文食らってると思ってんだよ!!)

 もう一度、と魔力を振り絞ろうとした勇者の視界が突然揺れた。
 呪文によるダメージではない。
 痛みではなく、異常な倦怠感による体のふらつき。
 魔力切れだ。

勇者「な……」

 どすり、と肉を貫く音が勇者の耳に届いた。
 騎士がいつの間にか湖月を鞘から抜き放ち、勇者の胸に突き立てている。

騎士「……ふぅぅ〜……ようやく…ようやく品切れか……危なかったぜ、勇者。俺ももう意地で立ってただけだからな。もう一発でも食らってたら終わってた」

勇者「が、ごふ……!」

 勇者の口から鮮血が零れた。

勇者「あー……敵わねえや。俺の負けだよ、騎士」

 そう言って、勇者は騎士の体を掴んでいた手を一度離し、今度は己の胸に剣を突き立てる騎士の腕を掴み取る。

勇者「だけど―――――油断したな。俺達の、勝ちだ」

 ぞわり、と総毛立つ寒気を感じて、騎士は後ろを振り向いた。

 ――――戦士と武道家が立ち上がり、騎士に向かって突進してきていた。

騎士「な…にィ!?」

戦士「おおおおおおおおおおお!!!!!!」

武道家「はああああああああああ!!!!!!」

 戦士も武道家も、その顔は涙に濡れていた。
 勇者の『呪文・大雷撃』が引き起こす轟音と閃光により、二人は早い段階で意識を取り戻していた。
 そして、勇者を手助けすることすら出来ず、ただ勇者の自爆技に任せるしかない自分達を恥じていた。
 己の無力を呪っていた。
 それでも、せめてと。
 勇者が及ばぬ時は、刺し違えても自分達が―――と伏せたままずっと機を伺っていた。
 勇者が雷に打たれるたびに、奥歯を噛みしめ、涙を流しながら。





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