勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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81:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:48:41.23 ID:09+TUdRc0
雷が落ちる。
既にその数は十を超えている。
二人の男はもはや声を上げもしない。
ただ歯を食いしばり、耐え凌いでいる。
目の前の男が先に倒れるのを待っている。
また雷が落ちた。
その苦痛に慣れることは無いのだろう。
勇者も騎士も、閃光に打たれるたびに苦悶の表情を浮かべている。
もうやめたいはずだ。やめていっそ楽になりたいはずだ。
なのに、勇者はまた叫ぶ。騎士の体を掴むその手を、離そうとはしない。
そんな勇者の姿を見ながら、エルフ少女は昨晩の部屋でのやり取りを思い出していた。
エルフ少女『本当に見るだけで済ませちゃうんだね。私の体は君の好みじゃなかったかな? 結構自信、あったんだけどなあ』
勇者『そんなことないよ。エルフ少女は本当に魅力的な女の子だと思う』
エルフ少女『だったら……』
勇者『だけど、駄目なんだ。もし本気で俺を誘ってくれてるんなら、女性に恥をかかせて申し訳ないと思うけど……』
勇者『その……そういうことをすれば、子供が出来る可能性があるだろ?』
勇者『だけど――――俺、多分明日死ぬからさ』
勇者『だから、ちょっとそんな無責任な真似は出来ないよ。ごめんね、マジで――――』
雷が落ちる。
勇者「ぐ、あぁ……ッ!! 『呪文・大雷撃』ぃッ!!!!」
轟音と共に、閃光が勇者の体を打つ。
いつ終わるとも知れぬ苦痛の繰り返し。
エルフ少女の頬を伝う水滴が、眩い雷光を反射した。
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