勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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89:名無しNIPPER[saga]
2016/02/28(日) 19:54:11.77 ID:09+TUdRc0
後日談。
勇者が提案したこの一大作戦によって、魔王討伐は為された。
勇者達が騎士を抑え込んでいる間に、魔王城に潜入した各国の精鋭が見事魔王討伐を成し遂げたのだ。
無論、かつての『伝説の勇者』の一件を経て、人々は『大魔王』の存在を知っている。
だから、決して手放しで喜べることではないが―――世界はつかの間の平和を手に入れたのだ。
世界に残った魔物の残党を一掃する討伐隊の活動も各国で活発に行われており、結果、魔物の数は激減した。
最後の戦いから数か月が経過した今はもう、物資運搬を『翼竜の羽』に依る必要はなくなっていた。
町と町とを繋ぐ街道を、物資運搬の馬車が活発に行き交っている。
物流が滞りなく回るようになったことで、この世界はますます発展していくだろう。
閑話休題。
勇者は一人、北の大地を歩いていた。
向かう先は、とある孤児院である。
院長「これはこれは勇者様」
勇者を出迎えたのは、孤児院を経営する小太りの院長だった。
勇者「皆の様子はどうですか?」
院長「皆、元気にしておられますよ。元気過ぎて困るくらいです」
勇者「今日は随分と人数が少ないように見えますが……」
院長「大多数の者が故郷に戻って『作業』をしております。ここに残っているのはまだ歩んで故郷に戻るのは厳しい幼子ばかりです」
勇者「そうですか……これ、今月の支給リストです。近々に物資を乗せた馬車がやってくる手筈になっています」
院長「おお、おお……! まことに、まことにありがとうございます…!!」
勇者「いえ、貴方達は孤児になってしまった子供たちを支える立派な人たちだ。これからも出来る限りの援助をさせていただきますよ」
院長「ありがたきお言葉……思い起こせばあの日、極北の国が魔族に滅ぼされたことで大量の孤児が発生しました。当然、この院だけでその子たちを全て収容できるはずもなく……皆の寝床を確保するために方々に手を回したものです」
院長「しかし寝床を確保しても、それだけの人数の子供たちを養い続けるには莫大な費用が必要となります。私共だけでその費用を捻出するのはとても不可能でございました。しかし、ある方が援助を申し出てくださり、我々は何とか子供たちを飢えさせずに面倒を見続けることが出来たのです」
院長「この数か月、その方からの援助が途絶えて途方に暮れていた所だったのです。勇者様が新たに援助を申し出てくだされなければ、あの子たちは……うぅ…まことに、まことに、ありがとうございます…!!」
勇者「ですから、どうかお気になさらず。今後の支援はその方から私が引き継いだものとして、責任をもって続けさせていただきます。ああ、そうだ。ちなみにその方の名前などは、まだ覚えていらっしゃいますか?」
院長「ええ、もちろん。『騎士』様と、そう名乗っておられました」
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