396: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:34:53.43 ID:yEOjnOa9O
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予感はあった。
今日も何か面倒なことがあるのではないか、という予感。
397: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:35:29.61 ID:yEOjnOa9O
雪姫の両手がジュウの身体を這い、最初にクリーンヒットした脇腹と、最後の一撃を撃ち込まれた鳩尾のあたりでピタリと止まる。
服の上から的確に一番違和感の残っている箇所を抑えられ、思わず身体が強張った。
決して雨の名前に動揺したわけではない、とジュウは自分に言い聞かせる。
398: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:35:58.92 ID:yEOjnOa9O
洋服、宝石、アクセサリー、バッグ、靴、その他諸々の雑貨など指向性はなく、気の向くままにふらふらしているといった感じだ。
この前の光のときは洋服の店だけだったからまだゴールが見えそうなものだったが、今日の雪姫には目的が見えない。
自分を脅してまで連れてきたというのに、ただ引っ張りまわすだけというのはジュウには理解の範疇を超えていた。
「……必要か、俺?」
399: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:36:27.27 ID:yEOjnOa9O
「光ちゃんの作り話じゃないの、って話」
雪姫の表情は冗談とも本気とも取れなかったが、拗ねているのは確かなようだった。
ジュウにはその理由もわからないが、もっとわからないのは雪姫の発言だ。
400: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:37:07.62 ID:yEOjnOa9O
「あ、次はここに入ってみよっか?」
「断る」
雪姫の進行方向にそびえるのは白い壁にピンクの看板。
401: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:37:35.41 ID:yEOjnOa9O
井原はジュウの通う高校で、かつては不良グループをまとめていた男だ。
入学当時から何度も殴り合った仲でお互いによく知った相手。
ただし以前とは違い、右腕の肘から先が巨大化し、機械のように黒光りする腕が生えていた。
あまりの異形にジュウは驚愕する。
明らかに普通の肉体では考えられない腕。
402: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:38:09.57 ID:yEOjnOa9O
凄まじい破壊力だが、避けられないほどの速度ではないことを確信する。
再び距離をとって、ジュウは大きく息を吐いた。
「柔沢ァ……」
403: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:38:45.18 ID:yEOjnOa9O
――はずだった。
上から振り下ろされるはずの黒腕が突如として進路を変え、ジュウの身体を吹き飛ばす。
辛うじて視界の隅で捉えたのは、手首のあたりからジェットエンジンのように噴出する炎。
咄嗟に後ろに転がったものの、巨大な鉄球をぶつけられたかのような衝撃。
今の一撃だけで意識を失いかけた。
404: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:39:12.74 ID:yEOjnOa9O
挑発に井原の意識が向く。
そこにいたのは当然、斬島雪姫。
カッターナイフの刃を鳴らしながら、雪姫は井原に対して挑発を続ける。
405: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:39:39.91 ID:yEOjnOa9O
「なんだあ? 先にお前が相手を」
井原の言葉は最後まで聞こえなかった。
いや、言うことができなかったのだ。
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