399: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/28(金) 15:36:27.27 ID:yEOjnOa9O
「光ちゃんの作り話じゃないの、って話」
雪姫の表情は冗談とも本気とも取れなかったが、拗ねているのは確かなようだった。
ジュウにはその理由もわからないが、もっとわからないのは雪姫の発言だ。
確かにこの前の偽デートの時、光はときどきおかしな言動をしていた。
違和感のある挙動もあったし、最後にはなぜか殴られたりもした。
しかし、全てが作り話だとして、そこにどんなメリットがあるというのか。
そんな作り話をでっちあげて、再びジュウと恋仲と思われてしまうようなリスクを冒して、一緒に買い物をして、そこにどんな目的があるというのか。
騙されるジュウを見て嘲笑っていたのかもしれないが、あの光がはたしてそんな陰湿な真似をするだろうか。
考えるほどに謎が湧き出てきて、ジュウは遂に考えることを放棄した。
自分で考えるよりも、本人に聞いた方が手っ取り早いに決まっている。
前髪をガシガシと掻いて、雪姫に向き直る。
「知るか、そんなこと」
雪姫はジュウの言葉に驚きの表情を見せたが、徐々に嬉しそうな笑みへと変わっていった。
「柔沢くんのそういうとこ、好き」
「……知るか」
直球を投げつけられて、ジュウはわずかにでも動揺してしまった自分を恥ずかしく思った。
この半年、自分はどこかおかしくなってしまったのだろうか。
常に変化する人間の心など、他人の好意など面倒だと、そんなものは期待していないと突っぱねていた自分はどこへ行ってしまったのか。
腕に頬ずりをしてくる雪姫に引きずられるまま、ぼんやりと繁華街を歩くジュウ。
相変わらず、むしろ先ほどまでよりも楽しそうに、雪姫は店を眺めては何も買わずに次の店へ向かうのを繰り返す。
ジュウはもはや諦め、雪姫が飽きるまで付き添うことにした。
そうしているうちに、時間帯のせいか少しずつ人が疎らになっていき、いつの間にか周りはカップルだらけになっていた。
そこでようやく、ジュウは自分がどこを歩いているのかに気が付いて足を止める。
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