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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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1 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/15(金) 20:56:18.10 ID:V4qJYoLE0
 時は二世紀末、漢王朝の時代。
 四世三公の名家たる袁家に代々仕えし武家である紀家に生まれた一人の男児。
 諱(いみな)を霊、真名を二郎というこの男は様々な出会いや経験を重ねていく中で、やがて世を席巻していく。
 しかし、彼には誰にも言えない一つの秘密があった。
 彼の頭の中には、異なる世界における未来で生きてきた前世の記憶が納められていたのだ――。
 これは、三国志っぽいけどなんか微妙に違和感のある世界で英雄豪傑(ただし美少女)に囲まれながら右往左往迷走奔走し、それでも前に進もうとする凡人のお話である。


※リトライとなりますが大筋ではそんなに変わらない見込みで
※なろうにても投下しております。こっちで書いて推敲してからなろうに投稿って感じです
※合いの手長文歓迎です


前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526044205/
過去スレ
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480942592/
ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445344769/

どんどこいくよ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1573818977
2 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/15(金) 21:03:41.04 ID:V4qJYoLE0
時は二世紀末、漢王朝の時代。
四世三公の名家たる袁家に代々仕えし武家である紀家に生まれた一人の男児。
諱(いみな)を霊、真名を二郎というこの男は様々な出会いや経験を重ねていく中で、やがて世を席巻していく。
しかし、彼には誰にも言えない一つの秘密があった。
彼の頭の中には、異なる世界における未来で生きてきた前世の記憶が納められていたのだ――。
これは、三国志っぽいけどなんか微妙に違和感のある世界で英雄豪傑(ただし美少女)に囲まれながら右往左往迷走奔走し、それでも前に進もうとする凡人のお話である。


        | / ィ/  /  / ∨ イ:|  | ト、 | ヽ  ∨  |
        ∨. //    ' !l /´    !|: ,ハ!| Y.  V  | ̄ ̄ ̄¨ヽ
        /乂 〃    |.l |! |    |イ::.ム仕≧!|  ∨ |       \
      , ィ´/¨7' i  | |::|:l !|:匕   //::/ィ'チ无勹 | | | \    /
     / .l.,'  ,'.| | ::! !::!从弍≧、/ レ' 弋::::::リ リ .,' | |ハ     /
     \ .|l  ! | | ::::いレ/「::::└!       `辷, イ / :: | |∧   i ←袁術
      \|  |ハ | ::::いト、弋‐リ_       ノイ:::: | | W  |
        W Vハ! | ハ \ ''"´   ′  '´´ l::::. | ト、| l\ l
         ヽク  ハ  ヽ >-     rヽ    ノ:::.  |   い! `┘
         /  /ハ   :::> 、     ┘  イ/:::.  :|   ヽヽ
        / _/:::::::::::\   ::::.≧ー ‐「 W7 レ::::.  ハ   \\
  _,, -iイ>'"..::::::::::::::::::::::≧: 、 .:::::マ‐┤ |ノ_!:::.   /:: ハ:..   ヽ > 、
./ , イ /  ..::::::::::::::::://    \ .:::} _| 「  ` く / ̄`ヽ:::::..   \:::::...> 、_
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.. / /  .::::::::::>' ̄`>_」―‐-、   い :| _>――-、j ! レ´ /  / 〉-┐:::::::::::::::\:::::::::::
:/ /  ..:::::::::└‐ '"´ノ |    \  !厂       \| /  /  | :::::::::::::::::::\:::::::
3 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2019/11/15(金) 23:02:00.19 ID:tkqH/Ehp0
わぁ。早くも4スレですか。早いですね。

新スレ突入おめでとうございます。

……袁術ちゃんかわええ。でも誰かさんに初めてを捧げちゃうんだろうな(憶測)
じ……き……誰かさんは爆発四散しろ(呪い)
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/16(土) 14:47:29.54 ID:1bLC/zqEo
建て乙
5 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/18(月) 21:17:36.81 ID:MAElKcUL0
>>3
どもです。
サラマンダーより早くありたいとは思っております!

>……袁術ちゃんかわええ。でも誰かさんに初めてを捧げちゃうんだろうな(憶測)
それもどうなるか分からないようなご時世になりそうです。ご期待くださいませませ。

>>4
どもです。
6 :赤ペン [sage]:2019/11/18(月) 21:56:13.34 ID:ib875aHT0
立て乙です
さて…明日になっても埋まってなかったら私が前スレの1000を頂こう
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/18(月) 22:45:37.78 ID:y7b2GEDWO
完結したら前スレを埋めよう
8 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:17:01.66 ID:trIZpCq90
「なん、だと……」

地面が崩れていくような感覚が俺を襲い、そしてよろめく。

「では、ボクはこれで失礼しますね。あ、流琉によろしくお願いします」

桃色の髪を二つに結い上げた少女が物凄いスピードで去っていく。
その少女――許?――がもたらしたのは一通の書状。華琳からの書状。そこには二つのことしか記されていなかった。
曰く。

――董卓、叛す。
――呂布、何進を誅す。

どういう、ことだ。いや、詮索は後だ。よりによって華琳からの急報だ。

「風と七乃を呼べ!」

室の外に控える侍女に声を張り上げる。多分これは、やばい。
ちり、と危機感。

「どうされましたの?お顔の色がすぐれませんわね」

風だか七乃だかの機転だろうか。それとも余程俺の様子がおかしかったのだろうか。
室には風と七乃だけではなく、麗羽様、美羽様に猪々子と斗詩までいる。

「何進が討たれた、と華琳が報せてきました。
 呂布の手によるとのことです。
 であれば、おそらく此方にも手の者が来るでしょう」

報告する俺――ぐったりである――に麗羽様は柳眉を逆立てる。
そこに口を挟んだのは七乃だ。

「それはまた……。
 信憑性はあるのですか?
 曹操さんのことですから、此方の軽挙妄動を誘うという意図はないですかねえ」

「ないな。こちらを騙すつもりならもっとありそうなことを言ってくるさ。
 そして華琳のことだからな。迷ってる時間も与えてくれてないに違いない」

恐らく董家軍は今にもこの屋敷に殺到するべく迫っているはずだ。
それくらいのギリギリ、でもどうにかならないわけでもないくらいのタイミングを華琳なら狙う。

「では、押し寄せる董家軍にどうしましょうかね。守りを固めるのは論外ですねえ。多勢に無勢です。
 まあ、降るか逃げるか、ですが」

洛陽での軍事力は月と、禁軍を統べる朱儁に集約されている。
即応性を考えれば董家軍の優越は明らか。恐らく朱儁のとこにも兵は差し向けられているだろう。
で、あるならば。

「――降伏は性に合わん。逃げるとしよう。
 それで、よろしいですか?」

麗羽様に問う。いやまあ、これでダメって言われたらどうしようとか今更ながらに思いながら。

「よろしくってよ。二郎さんがそうおっしゃるならばそうしましょう。
 ――委細、お任せいたしますわ」

即答。その信頼の篤さにぎしり、と肩が軋んだ。
が、今はそれどころじゃあない。脱出行の最中にとっ捕まるとか間抜けの極みだ。
俺のみならばともかく、麗羽様や美羽様に恥をかかすわけにはいかん。
風と七乃にざっくりでもいいから計画を、策を求めようと目を向ける前に、七乃は口を開く。

「はいはい。こんなこともあろうかと北部尉は買収済みです。既に日は落ちていますが、鼻薬を嗅がせてますので、北面の門扉は開け放たれるかな?」

は。さっすが七乃。手回しがいい。
だが、それに風が異を唱える。

「今現在洛陽の警備は董卓さんの手中にあります。それはあからさますぎやしませんかねえ。
 囲師には必ず逃げ道を用意すべしと申します。
 そちらは危うい道かと〜」
9 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:17:28.31 ID:trIZpCq90
むむむ。そこいらへんどうなのよ、七乃ってば。

「そうですねえ。正直洛陽に於いてはまだまだ情報網は整備できてないのが現状です。
 ……ただでさえ黄巾の乱と袁胤様の乱で腕利きの細作がいなくなりましたからねえ。
 ですから、私からはなんとも」

……多分それは七乃にとっては屈辱だろう。諜報がための張家であるのだから。
それでも、張り付いた笑みでこう言ってくる。

張家の面目なんて、勝ってからいくらでも立てますから、と。

つまり、それほどの窮地なのだ。今は。
だったら、逃げるにしても全力を尽くさんと不味いな。

「屋敷にある甕、壺、そして匣(はこ)を馬車で連ねて北面へ。
 風、頼んだ」

「囮ですね、任されました〜」

だが、それだけでは時間をそんなに稼げないだろう。あっちには地の利がある。

「時間稼ぎは任せてもらいやしょう」

うっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。

「皆々様、ごゆるりと。きっちり時間を稼いでみまさあ!」

呵呵大笑。
体中に走る傷跡。兵卒から紀家軍の副将まで登り詰めた運も実力もある古強者(ベテラン)が、ぶ厚い胸を叩く。

「なーに。董家軍とは知らぬ仲でもないですからねえ。
 いよいよとなったら降りますよ。
 ……ようやくにも授かった初孫の顔を拝むまでは死んでも死にきれないですから!」

「ああ、そうか。だったら任せる」

迷う暇なぞない。
俺の言葉に、いかつい顔を綻ばせて、どすどすと足音も勇壮に室を去る。戦の準備なのだろう。
いくら降ることが前提とは言え、時を稼ぐには武威が必要だからして。

「それでは、華麗に遁走するとしましょう。でも、その前に……」

麗羽様、そして美羽様に相対する。

「ええと、流石にそのままでは無理があるのです」

きょとんとしたお二人になんと切り出したものか。

いや、なんだ。

貴女達、煌びやかすぎて悪目立ちするから遁走とか無理っぽいんですよとか――!

◆◆◆
10 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:18:26.40 ID:trIZpCq90
「アニキー荷物こんなもんかな?」
「おう。金目のもんは置いてけ。時間稼ぎになる。時間が金で買えるなら安いもんさ。
 服も着替えろよ。絹の服とかいっぺんでばれるからな」

うっそりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。

「分かってるってばー。そこいらへん、アニキの分も含めて斗詩が用意してくれてるよ?
 それはともかく、姫にはアニキからよろしくなー」

やっほうとばかりに身を翻して駆けていく猪々子。いや、なんか元気をもらった気がする。というか。
あんな目で見られたら、へこんでられんわなあ……。

「もう、ごわごわしますわねえ。それにこう、安っぽいというか、無粋と言うか……。
 いやですわ二郎さん。そんな、見ないでくださいな。見れたモノではないと云うのはわたくし自身が一番分かっておりますの」

粗末な、つぎはぎだらけの衣服を身に纏って麗羽様と美羽様が。

「や、正直これほどまでとは思ってなかったですよ。
 こんなにも、纏う衣服に関わりなく光輝あるとは思いませんでした」

いや、隠密行動するためには本当に駄目なんだよ。なんか満足げな姉妹にこれを言うのは気が咎めるなあ。
でも逡巡する余裕もないしなあ。

「どうしましたの?」
「いや、そのですね。お二方の光輝が隠しきれないのですよ。主に、その輝く御髪(おぐし)で……」

麗羽様に至ってはくるくる縦ロール全開なのだ。
 なんでも専用のセットのための器具があるらしい。歴史考証仕事しろ。

俺の言葉に麗羽様は苦笑して美羽様に顔を向ける。

「美羽さん。時として美しさは罪なのです。どうやらわたくしたちはその存在だけで世界の注目を集めてしまうようですわ」
「むむ、麗羽ねーさま。よくわからんが、それはまずいのではないかや?」
「その通りですわ。ですから、こうするのです!」

ばさり、と金色の欠片が地に墜ちる。
手にした短刀で麗羽様が自らの御髪をばっさりと切り捨てたのだ。

「美羽さん、よろしいですわね?」

無言でこくりと頷く美羽様の、蜂蜜色に輝く御髪をいっそ無造作に。

「二郎さん、これで身軽になったでしょう?」

ええと。
お流石でございます麗羽様。
でも。

「あ、あんなにお見事な御髪でしたのに……」

そうするべしと思っていても、口から出るのはそんな言葉。いや、軟弱者!
そんな風に思うのは感傷なのだろう。それを覆い尽くすが如く、暴風が吹き荒れることになる。

「はいはーい。これでもくらえ!ですー!」

ぶはり!とばかりに視界が灰色に染まる。

「みなさん、もっと薄汚くないといけませんよー」

どっから集めたか知らんが、大量の灰を俺たちにぶつけて七乃はにこやかに笑う。

――抗議の声を上げられなかったのは。彼女が、七乃が。
普段は絶対に身に付けない黒装束に身を纏っていたからだ。

どうやら、本当に生きるか死ぬかの局面なのだな。

「それでは、参りましょうか」

「頼んだ」

そうして俺たちは、洛陽の夜闇に踏み出すのであった。
11 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:19:03.68 ID:trIZpCq90
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は
「大脱走」

よさげなの、よろしくお願いします。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/21(木) 00:03:51.76 ID:NRPsOLXBo
乙です

さーて緊迫感が高まって参りました
しかしショートの袁姉妹とかそれはそれで見たいですよね、絶対美人さんですよ


題案は
『灰被り達の逃走』
などと。
13 :青ペン [sage]:2019/11/21(木) 03:29:49.37 ID:vK0h7L80o
>>11
新スレ乙からの乙なんだよ

むむむ…
今回は敢えて【run for survive】
14 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/21(木) 21:52:10.25 ID:2+Mbb2E/0
>>12
どもです。

>さーて緊迫感が高まって参りました
あと3-6シーンでこの章完結予定です

>しかしショートの袁姉妹とかそれはそれで見たいですよね、絶対美人さんですよ
俺になあ、絵心あればなあw
絶対美人さんなんだよなあ

>『灰被り達の逃走』
ミスリードもできそうでよいですね。遁走のほうがいいかもしれないまである。
ほむ。

>>13
どもどもです。

>今回は敢えて【run for survive】
オサレ!でも英字はよっぽどじゃないとやらんです
だってニュアンスが制御できないもの


しかし、今月中に終わらせて冬休みあたりにあっちで投下っていけそうやで!
15 :青ペン [sage]:2019/11/22(金) 03:09:11.81 ID:fCnhQmIWo
>>14
(後ろにに〜逃走中〜ってつけるか迷ったのは内緒だよ)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 06:36:33.66 ID:5pK+deHNO
「明日への転進」なんてどうでしょう
17 :赤ペン [sage saga]:2019/11/22(金) 18:07:08.10 ID:OHSFnRog0
乙でしたー
>>8
>>囲師には必ず逃げ道を用意すべしと申します。  意味は分かりやすいので良いと思いますが
○囲師には必ず闕(か)くと申します。      原文はこれかな?もしくは【囲師は周することなかれと】とか?なんかちょっと気取った言い方をするのはもはや習慣(そんな事するから後世の人が意味を解読しなきゃならなくなるんだよ…古文なんて嫌いだ!
>>9
>>うっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。 これって【うっとり】とほぼ同じ意味なんですよね
○のっそりと、それでも確たる意思を込めて雷薄が口を開く。 【のんびり】とはちょっと違うけど動きが遅い。と言う意味ならこれかな
>>きっちり時間を稼いでみまさあ!」   喋り言葉だと分かり難いけどこれって《時間を稼いでみますよ》になるのかな
○きっちり時間を稼いでみせまさあ!」  だとしたら《稼いでみせますよ》になる方が良さそうかな
>>10
>>うっそりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。 こっちは慌てないためにあえてそう振る舞ってる感じもするので
○おっとりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。 二郎らしくないか?あとは【のほほんと】とか【のんびりと】とか?

雷簿!約束だからな!!いよいよとなったら降るって紀霊も袁術も袁紹も聞いたからな!口約束だからって破ったりしたらのk…故郷の家族がどうなるか分かってるよな!?
その髪の毛ガチで金になりそうよね…昔の鬘の材料的に。なんとなく七乃が懐に忍ばせてそうだけどまさかね
18 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 21:57:22.31 ID:sTNFGTqg0
>>15

そういうことかw

>>16
よきです。
いい。こういうセンスは一ノ瀬にはないもので、嫉妬すらしてしまう。

>>17
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>雷簿!約束だからな!!いよいよとなったら降るって紀霊も袁術も袁紹も聞いたからな!口約束だからって破ったりしたらのk…故郷の家族がどうなるか分かってるよな!?
これ言った時にどういう覚悟を決めていたか、ということですよね。
故郷の家族は、雷薄が儚くなったら優遇されますよね?

>その髪の毛ガチで金になりそうよね…
そのネタは黄金拍車で割と効きます
多分無為に炎となるのではないかな(ネタバレ)
19 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:22:45.05 ID:sTNFGTqg0
七乃に先導されて俺たちは夜の洛陽をひた走る。足音一つ立てず――黒装束もあって――ともすれば見失いそうになるほど七乃は穏行していて。彼女の本領を改めて認識する次第である。
通りごとに足を止め、手鏡で先を慎重に確認しているのに追いつくのも一苦労である。
治安のよろしくないエリアを通っているので、そこいらのごろつきに絡まれそうになることもあるが、猪々子が瞬時に黙らせる(物理)。

七乃に続くのは猪々子、麗羽様が続いて美羽様を背負った俺を斗詩が後ろでフォローしてくれている。そんな構図(フォーメーション)である。

迷いなく進む七乃。いや、実際大したものである。
基本、何進という裏表に絶対的な影響力がある存在があった。その手前、洛陽では諜報活動を自粛していたのだが、美羽様入内が決まってからは精力的に動き回っていた、みたいです。
きっと、今進んでいる道だって彼女の地道な積み重ねがあってのルート選定なのだろう。
そして、目的地にたどり着く。そこは門扉……などではなく、洛陽を取り囲む防壁である。

「はい、到着しましたー。ひとまず私のお仕事はここまでですねー」

そ、と視線を外に向け、索敵を。いつ追手が来るか分かったもんじゃないしな。いや、雷薄や風がうまいことひきつけてくれているとは思うのだが。

「じゃあ、私達の出番ですね」

にこり、と斗詩は笑って準備運動を始める。背負った荷物を下ろし、ゆっくりと柔軟体操(ウォヲーミングアップ)を始める。
それは、いつも俺たちの鍛錬の前にやっていたルーチン。万全を期すためにもこれは外せない。

「頼むぜー、斗詩ー。アタイらの未来は斗詩にかかってんだからさー」

にひひ、とお気楽な口調で猪々子が煽る。

「うん。文ちゃん。そうだね。今、すごく気合いが入ってるよ。すっごく身体が軽い。怖いものなんてない。
 そう。絶好調、ってやつかな」

斗詩にしては珍しくそんな軽口を叩く。屈伸、そして伸び上がり、軽く跳ねる。
にか、と猪々子は笑ってこちらを見る。

「アニキ、アタイらはいつでもいいぜ」

軽く頷き、三尖刀を手にする。
俺の身体能力はこの二人に及ばない。だが、こいつの力を発動させることで俺の力は猪々子に匹敵するのである。
これを知るのは袁家でも限られた面子。そしてこの子らはずっとそれを知っていて。その上で俺を。

「よしこい!斗詩!」

三尖刀に何かが吸われ、全能感が身体に満ちる。筋肉の一筋、細胞の一つまでもが活性化されたようなそれに意識を馴染ませる。
俺と猪々子が並び立つその中央めがけて斗詩が全速力で走ってくる。一陣の風となり、踏み込む。
20 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:23:11.36 ID:sTNFGTqg0
「そおおおおおおおおおおおおおおおい!」

斗詩のその運動エネルギーを、ベクトルを上方に置換する。捕えた足からもたらされる運動エネルギーを全て上方に変換して跳ねあげる。いけ! 
ぶち、と筋肉の切れる音が内側から響くのも構わずに。

「ああああああああああああ!」

猪々子の絶叫がかすかに耳に入る。
そう、これは昔日によくやった遊びの延長。どれだけ高く飛べるかを競ったそれの延長。
違うのは、その行為にかかっているものが大きいということ。

見れば、ぎゅん、と斗詩は上昇を続ける。跳んでいく。斗詩の運足の妙あってのことだ。俺や猪々子ならば城壁にぶち当たってしまう。

ぐんぐんと上昇し、その最頂点に達しても流石に城壁の頂上には届かない。だがそれは織り込み済み。

ギン!と鋭い音が響く。いつの間にか手にしていた双剣を、見事詰まれた石の隙間にねじ込んだのだ。

「――ふう、うまくいったか」

「そう、みたいだね。
 よかったぁ」

ぎゅ、と猪々子が後ろから抱きついてくる。僅かに振るえているのはそれでもやはり心配なのだろう。
これからが斗詩に無茶振りした正念場である。

「きっと、大丈夫だよね?アニキ……」

双剣だけを頼りに、少しずつ斗詩が登り始める。石の隙間に双剣を突き立て、その身体をじり、じりと持ち上げていく。
突風の一つもあれば飛ばされそうなほどそれは危うくも見える。

「斗詩さん……」

心配そうに麗羽様が俺に縋り付いてくる。美羽様は無言でぎゅ、と。

ええい、見守るだけの身が情けない。
急速に力が抜けていく感覚に身を委ねながら、俺は無言で斗詩を見守ることしかできない。

どれだけの時間が過ぎたのだろう。永劫とも思えるそれは案外そうでもなかったのかもしれない。
じりじりと、それでも確実に上る斗詩。まあ、たまに剣が弾かれた時にはもう心臓がタップダンスを踊ったものだが。
それでも、ようやくに城壁の上に到達したのを見て。

「よ、よかったあ」

門扉が警戒されてるならば城壁を越えればいいじゃないというのを通しきったのだが、精神的に疲れた。いや、多分一番疲れたのは斗詩だろうけども。

「はいはーい。二郎さんは周囲の警戒お願いしますね。ここまできて捉えられたら意味がないですし」

にこりと笑って七乃が壁際に立つ。
――呆けていた俺たちに代わって周囲を警戒していてくれたのだと今更ながらに気づく。
21 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:23:38.33 ID:sTNFGTqg0
「それでは、お先です。美羽様、お待ちしておりますねー」

斗詩が落としてきたロープをノールックで掴み、軽やかに駆けあがる。
うん、登攀するというよりは駆け上がるというべき速度で、たちまちに登り詰める。

「うし、次はアタイだな。アニキ、何かあったら呼んでくれよな。駆けつけるから」

いや、駆けつけるというか飛び降りるって感じだろうが。そんな突っ込みをするまでもなく、猪々子も軽やかに昇っていく。
俺ときたらこの場では役立たず一直線なのに、信頼が重い。頑張る。

そしていよいよ俺たちの番だ。
垂れるロープを腰に巻きつけ、美羽様を背負い、麗羽様を――。

「失礼します」

真正面から抱きかかえる。常ならば落とす不安なぞないのだが、今の俺にそんな筋力があるかは疑問。
それを知っている麗羽様は、ぎゅ、と俺にしがみついてくる。

「二郎さん……」

ずり、ずりと引き上げられる。猪々子が引き上げているのだろう。あっという間に洛陽の街を見下ろせるほどの高さまで到達する。
振り向いて袁家の邸宅らしきを灯りを探す。
ほ、と息をつく。どうやら、火は放たれていないようだ。

ぎり、と歯を噛みしめて呟く。

「雷薄。死ぬなよ……」

ぎゅ、と背後から伸ばされた手、俺に抱きつく手が震えた気がした。

「ここから出て、当てはありますの?」

微かに振るえながら麗羽様がそんなことを問うてくる。

「勿論。まあ、伊達に放浪しちゃいませんって」

軽薄に応えながら、思う。
雷薄、風。無事でいてくれよ、と。
22 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:25:19.65 ID:sTNFGTqg0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!未定です。
何もなければ遁走とかになります!

あと4エピソードくらいで終わりそう

なんとか上皇様のお誕生日には再開したいものです。
がんばゆ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/25(月) 23:05:42.60 ID:CxclsI7TO
「勝利への脱出」って書こうと思ったらまんま昔あったスタローンのサッカー映画のタイトルだったww
24 :青ペン [sage]:2019/11/26(火) 05:08:46.76 ID:aXQ+BbN6o
>>18
はい、そーゆーことです(笑)
25 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/28(木) 21:43:18.03 ID:+YAhAMYQ0
>>23
どもです。
あれ、スタローンがGKやってるやつですよね
地味にペレが出てて草生えましたな
アクションがサッカーで超地味な感じという印象w

>>24
くさ
26 :赤ペン [sage saga]:2019/12/02(月) 16:44:37.69 ID:qofE6UVT0
乙でしたー
>19
>>七乃に続くのは猪々子、麗羽様が続いて美羽様を背負った俺を斗詩が後ろでフォローしてくれている。   接続詞に違和感が
○七乃の後ろに猪々子、そして麗羽様が続いて美羽様を背負った俺を斗詩が後ろでフォローしてくれている。 こんな感じでどうでしょう
>>ゆっくりと柔軟体操(ウォヲーミングアップ)を始める。 ケアレスミスですね
○ゆっくりと柔軟体操(ウォーミングアップ)を始める。  こうですね
>>20
>>その最頂点に達しても流石に城壁の頂上には届かない。 【頂点】に既に最もの意味があるので
○その最高点に達しても流石に城壁の頂上には届かない。 もしくは【その頂点に達しても】の方がいいと思います
>>見事詰まれた石の隙間にねじ込んだのだ。 すし詰め的な?
○見事積まれた石の隙間にねじ込んだのだ。 こうですね
>>僅かに振るえているのはそれでもやはり心配なのだろう。  これだと《剣を振る》とかの意味ですね
○僅かに震えているのはそれでもやはり心配なのだろう。   こうですね
>>21
>>そんな突っ込みをするまでもなく、猪々子も軽やかに昇っていく。 【するまでもなく】だとちょっと意味が違うような
○そんな突っ込みをするひまもなく、猪々子も軽やかに昇っていく。 もしくは【する間もなく】でもいいですね
>>振り向いて袁家の邸宅らしきを灯りを探す。 【を】が多いですね
○振り向いて袁家の邸宅らしき灯りを探す。  それとも【邸宅らしき辺りを探す。】でしょうか?
>>微かに振るえながら麗羽様がそんなことを問うてくる。 さっきの震えは雷簿を思って、今度の震えはこの先を思って、かな?
○微かに震えながら麗羽様がそんなことを問うてくる。  大丈夫だ、問題ない(震え声

猪々子もどちらか代わってあげれば…いや実際最後の3人の場面で襲われたら二郎ちゃん2人足手まとい護りながらはかなりきついぜ
そして斗詩が凄い勢いでフラグ立てて「こいつぁやべえぜ」って思ったねw
27 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/02(月) 22:00:09.75 ID:CvCetfbh0
>>26
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

さて。

>猪々子もどちらか代わってあげれば…いや実際最後の3人の場面で襲われたら二郎ちゃん2人足手まとい護りながらはかなりきついぜ
むしろ二郎ちゃんも足手まとい状態です!
なのでさっさと三人引き上げようという態勢ですね。
七乃さんに周囲警戒任せて引き上げ斗詩猪々子。
非常時には(消耗度合いの高い)斗詩が飛び降りて壁となる感じでした。
実はここは追撃戦が設定されてたんですけど、七乃さんの隠密スキルが活きてしまったのです。

本気になった七乃さんはすごいなあ、と観念したのでした。
しゃあない。
物語的には脱落者が出た方が美しかったとは思うのですけどね。
ここらへんは内緒でござるよ。
28 :赤ペン [sage saga]:2019/12/03(火) 10:19:51.11 ID:fQc/ZrE10
ゲーム世界、漫画世界に転生モノで主人公が【原作を知ってるけどある日気づいたらその世界にいた】タイプのモノって二次元キャラが三次元になった違和感はどの程度なんだろうか
特に髪の色とか目の大きさとか…たまに【知らない天井だ→ふと鏡を見るとそこには大好きなゲームの誰誰の顔が!】みたいなのあるけど見える世界そのものの現実との違いがありそう。趙雲の髪?ハハッ
29 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/03(火) 21:02:49.60 ID:lI6EtF5s0
脳内くちゅくちゅされて違和感が仕事しない、だと闇が生まれるます

あくまでディフォルメだけど、そのキャラだと分かるってどういうことだってばよ
30 :赤ペン [sage saga]:2019/12/04(水) 09:44:26.75 ID:VA/eXJld0
銀魂(実写)の世界なら銀魂世界だと気付きつつ違和感も少ないかもしれないかな?
DB(ハリウッド)の世界に転生したよ!とかだったら主人公がそれを受け入れられるか…
ネギ魔も確か実写があったっけ…とはいえアニメや漫画やエロゲの可愛いorエロいキャラをリアル化されてそう受け止められるのか
31 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:02:54.65 ID:c1wVtIMX0
銀魂はイメージしやすいですねえ
見た瞬間銀さんとか神楽ちゃんとか分かりますし
ああいうレベルで脳内変換されるのかなあ

しかし平穏に生きようとして自分の容姿が銀髪オッドアイとかだったら草生えるw
無理じゃんw
32 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:58:07.10 ID:c1wVtIMX0
「総員、傾注!」

白を基調とした甲冑に身を包んだ雷薄が居並ぶ部下に喝を飛ばす。
いや、厳密に言えば彼ら彼女らは直属の部下ではない。袁紹、袁術。そして四家の長に仕える近侍たち。
いずれも素性の正しく、将来を嘱望される幹部候補生たちである。いずれは彼らが袁家を担っていく。そうなってもらわないといけない者たちだ。
そんな、まさに人財を雷薄は睥睨し、躊躇いなく使い潰すことを選択する。
多くは言わない。

「まことに済まんが、死守だ!」

明敏な彼らにはそれだけで十分。これから稼ぐ時間により仕える主たちの命を贖うのだ。贄となるに異存はない。

「いやー、参ったなー。でもまあ、ここが踏ん張りどころってね!」

へらへらと鉄鞭を手にした青年が口を開く。口先の英雄とも言われる彼は正直荒事には向いてはいないが、この際そうも言ってられない。

「はいはい、泣き言は後でたーっぷり聞いてあげるから黙ってようね。おじさんたちの頑張りが袁家の命運を握っているんだからさ」

鷹の目、と異名をとる少女が混ぜっ返す。

「はうー。かあいいかあいい美羽様のためだもの。頑張っちゃうかな、かな」

かつての如南攻防戦にて功績を挙げ、袁術の真名さえ許された彼女が笑う。
彼ら彼女らはけして使い潰していい人材ではない。雷薄は苦虫を噛み潰したような顔で内心詫びる。

……雷薄の生まれは貧農の三男坊だ。食うに困って軍に志願したクチだ。腕っぷしには自信があった。が、野盗になるのは嫌だった。彼自身が貧農出身だったから、だ。
それに、畑を耕すよりは兵隊になった方が女にちやほやされるだろう。そんな思いもあった。
恵まれた体格と膂力で頭角を現し、あの匈奴戦役でも生き残り、武勲も立てた。気が付けばまさかまさかの大出世である。

だから、自分に関しては命燃やす時は今と決意している。巻き込む若人らに詫びる言葉を雷薄は持ち合わせてはいない。
いや、それでも。
それでも死んでくれと言わなければならないのが指揮官というものなのだろう。
きっと目の前の彼らはそんな逡巡すら見抜いてなお自分の判断に付き従ってくれるのだろう。
では自分も、彼らに相応しい立ち振る舞いをせねばならない。

「では、多くは言わん。一秒でもいい。我らが主君を逃がすための捨て石として、死兵となってくれ」

言い捨てて、門扉に向かう。
既に此処は戦場。既に包囲されている。まさに、死地であった。
33 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:58:33.34 ID:c1wVtIMX0
◆◆◆

「貴様ら、ここが四世に渡り三公を排出した名門袁家の当主、袁紹様。
 そして畏れ多くも入内が決まっている袁術様の逗留先と知っての狼藉か!
 ただちに立ち去れい!下郎ども!」

隠しもしない殺気を込めて雷薄が威圧する。
場を圧倒するその声量。それは紀霊が高く評価するもの。堂々とした体格から発せられるそれは質量すら感じさせるほどになり、並の胆力では抗うことすらできない。

「その袁紹殿に用がある!袁紹殿はいずこにおわすか!お目通り願いたい!」

であるから、それでもなお怯まずに述べる彼の胆力は評価されるべきであろう。
雷薄の威圧に刹那怯むも朗々と用件を述べる。

「既に時間も遅い!明日出直すがよかろう!」

門前払いである。が、それを予想していたのだろう、気圧されることなく歩を進めてくる。

「ええい、話にならん。ことによれば力ずくでもいいのだぞ――」

取り囲むは数百。守るは十数名。力押しされたならば鎧袖一触であろう。
さて、どうしたものかと雷薄が考え込もうとした時。

「行きます」

雷薄の横を通りながら、口も動かさずに伝える。
それで張家所属と分かる。
その極秘の話法。それこそは伝え聞く張家の秘伝の一つ。
それに彼女は如南攻防戦にて袁術から真名を許された英傑の一人である。そうと知って雷薄は覚悟を決める。
どうせどん詰まりなこの状況。動かすならば彼女のような英傑が相応しい。
そして火消しならば慣れている。得意というのは語弊があるだろうが。
34 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:59:00.41 ID:c1wVtIMX0
◆◆◆

「呂家軍の将軍様。
 ご進言が。ご進言があるのです」

気弱げな口調、しとやかな仕草。女官としての気品、そして漂う色気に対した呂家軍の士官は。

「ほほう、どうしたというのかね」

前に出てしまう。

「ああ、そこにいられましたか。
 耳寄りな情報がございます。お求めになっているものです」

歩を進める女官がしゅるり、と帯を緩める。
媚びを売ろうというのであろうか。その身体で何かを贖(あがな)おうというのであろうか。
その期待にごくり、と生唾を飲み込み、更に数歩進み出る。

ゆるり、とした運足。ゆらりとした脱衣。彼女が場を支配していたからこそ、達した。

「しゃおらぁあああああ!」

闇に紛れての一撃。衆に混じりて成した会心の一撃。まさか後方から、自軍から成されるとは思ってもみない。
だからそれはまさに必殺。

会心の雄叫びを上げるのは、これもまた如南攻防戦の英雄。
兵士を、領民を鼓舞し士気を高止まりさせた口先の英雄。
そして今ここに、口先だけではないことを証明した。彼の手にした鉄鞭は見事に指揮官の頸椎を砕き、返す一撃で顔面を粉砕する。

「は、ちょろいもんだぜ!」

残心もそこそこに先の女官に並び立つ。
両者が纏うのは黒装束。

「あはは、流石だね!
 知ってたけど、ここでそうくるかー。
 私がやっちゃうつもりだったんだけどなあ。
 これは、負けてられないなあ」
 

すらり、と女官が構えるのは鉈、のようなもの。
男と背を合わせ、周囲を睥睨する。

「まあ、俺だってたまにはいいとこ見せないと、な」
「そうだね。うん、すっごく格好よかったよ」
「俺に惚れたら火傷するぜ?」
「だったら、それもう手遅れ、かな。今更だし。
 全身火まみれで、燃え上がっちゃったよ」

軽口を叩く二人を取り囲むのか、袁家邸宅に突入するのか。指揮官なき董家軍。
その揺れを歴戦の雷薄は見逃さない。
轟く声。
重低音のそれは場に響き渡る。
かつて紀霊が、夏候惇にすら匹敵するとまで評したそれは場を支配する。

「総員、突撃ぃ!
 袁家の存亡ここにあり!踏ん張れい!」

指揮官先頭は紀家の伝統とばかりに雷薄は吶喊する。連携なんぞは激戦のうちに生まれるものである。
そして、力の限り足掻いて見せよう。
それが今の自分にできる最善であると信じて。
手にした得物を振りかぶり、矢嵐を受けながら雷薄の口元はニヤリと吊り上っていた。
35 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:59:26.73 ID:c1wVtIMX0
◆◆◆



「誰かある!」

応えは、ない。
初手において敵指揮官を潰し、一時は優勢ではあったが流石に多勢に無勢。
統制なくとも数の暴力に押されて下がりに下がって背にした扉は屋敷の最奥。
ここが突破されればここに袁家首脳がいないことが決定的に露見してしまう。そんな最終防衛線にいるのは雷薄ただ一人。
幾多の勇士既に散った。散ってしまった。

「やらせるものかよ……」

それでも雷薄は気力を振り絞って迫る敵を睨む。
白を基調とした甲冑は返り血のみならず自ら流した血で紅く染まっており、修羅もかくや、という姿である。
幾本も矢が突き刺さり、傷からは血が流れ出て意識が白くなりそうである。
いや、実際気が付くと膝をつき、倒れ込みそうになる。
数瞬意識すら手放し、顔を上げるのも億劫だ。

それを好機と見たか、或いは力尽きたと見たか、敵兵がとどめとばかりに槍を突き立ててくる。
その激痛すらどうでもよいとばかりに倒れ伏したくなる。
それでも、それでも。

「やらせはせん!やらせはせんぞ!貴様らごときに、やらせはせん!
 袁家の栄光を!世の平和を!やらせはせん!」

吠えて手にした得物を振るう。暴風がごときその勢いに押されて包囲の輪は距離を取る。

「ここを通りたくば!俺の屍を越えていけい!」

仁王立ちする雷薄は凄絶に笑い、威圧する。
その威を畏れ、矢嵐を以って無力化しようとするも揺るぎもしない。
むしろ呵々大笑して煽るほど。
さしもの董家軍が、その武威に三度下がったという。


絶命してなお威圧する武威は後世語り草になった。
36 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 22:01:04.44 ID:c1wVtIMX0
本日ここまですー感想とかくだしあー
難産でした。

題名案
「防戦」
ネタ案
「暁に雷薄死す」

いやもうjほんとにお助けくだしあー

後少しで区切りだがそれが遠いよ助けろくだし
37 :青ペン [sage]:2019/12/05(木) 00:21:43.81 ID:28k68zu1o
>>36
乙なんだよー

歴連の猛将、命賭して民草を護る

でどない?
38 :赤ペン [sage saga]:2019/12/05(木) 15:41:24.03 ID:OnfMPz4J0
乙でしたー
>>32
>>白を基調とした甲冑に身を包んだ雷薄が居並ぶ部下に喝を飛ばす。 【喝】だと叱責とかの印象があるので(例えばざわついてて落ち着きないとかならともかく彼らは後の幹部候補とあるのでそういう事はなさそう)
○白を基調とした甲冑に身を包んだ雷薄が居並ぶ部下に檄を飛ばす。 コトバンクさんによると《自分の主張や考えを広く人々に知らせ同意 を求める。また、それによって人々に決起を促す。》なのでこれでどうでしょう
>>袁紹、袁術。そして四家の長に仕える近侍たち。  この書き方だとこの場に袁紹、袁術がいる様にも読めるっちゃ読める(言いがかり
○袁紹、袁術、及び四家の長に仕える近侍たち。   もしくは【袁紹、袁術……そして四家の】とかかな?
>>口先の英雄とも言われる彼は正直荒事には向いてはいないが、 《彼》の異名は口先の魔術師だけど【口先の英雄】って揶揄っぽくない?
○弁舌の英雄とも言われる彼は正直荒事には向いてはいないが、【演説】、【口舌】、【弁論】、【饒舌】…この辺が良さそうかな
>>34
>>全身火まみれで、燃え上がっちゃったよ」  【火まみれ】…言わなくはないけど何となくこれだと【火の粉にまみれてる】感が
○全身火だるまで、燃え上がっちゃったよ」  それとも【火あぶり】?全身火傷してるような表現ならやっぱり【火だるま】かなあ?
>>35
>>いや、実際気が付くと膝をつき、倒れ込みそうになる。  これは(気を一瞬失って)気が付くと、という意味かしら?それだと実際に膝は着いた?ううむ
○いや、実際気を抜くと、膝をつき倒れ込みそうになる。  (一瞬でも気を抜いたら)膝をついて倒れ込みそうだ。と言うならこうかな?
○いや、実際気が付くと膝をつき、倒れ込みそうになった。 ふと気が付いたら膝をついていた、あと少しで倒れ込むところだった。ならこうですね
>>さしもの董家軍が、その武威に三度下がったという。  《さしもの孔明が騙された》とかだとちょっと違和感があるので
○さしもの董家軍も、その武威に三度下がったという。  《(勇敢で知られる)さしもの董家軍(ですら)も》を縮めた言い方と思えば

信念に殉じて死ぬなんて漢としてはさいこうだろうけど約束を反故にされた上司とか残された家族としては溜まったもんじゃないぞ!!…いやまあ皆うすうすは彼らがここを死地と定めたことを分かってたけどさ(美羽様も多分感付いてたよね
【死中に活を見る】…自分の命を公平な重さで天秤に乗せたこの20人弱が生きていればこの先袁家がどれだけ楽だったことか
39 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/09(月) 20:19:47.24 ID:sH1+4U600
いやあ、師走師走。
割と忙しいですね。さっさと仕事やめて隠遁したいものです。
仕事やめたら社会貢献するんや。

>>37
どもです。

>歴連の猛将、命賭して民草を護る
素敵すぎです。
浪漫ですね。
流れるようなその表現、妬ましい

>>38
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>信念に殉じて死ぬなんて漢としてはさいこうだろうけど約束を反故にされた上司とか残された家族としては溜まったもんじゃないぞ!!
本人はやりきった感ですね。
周囲は「ちょ、待てよ!」状態
美談になるエピソードですが、ご指摘の通りなのは確定的に明らか。
それでも彼は何度でも同じ選択をするでしょう。

さて、虜囚になって交渉材料とされることを拒んだのか的な指摘が外部からきましたが、
多分そこまで考えてなかったんじゃないかなー
ただひたすらに目の前の案件を処理する現場指揮官なのであろうと

>…いやまあ皆うすうすは彼らがここを死地と定めたことを分かってたけどさ(美羽様も多分感付いてたよね
そこはどうでしょうね。つきあいの長い七乃さんくらいかな?
少なくとも二郎ちゃんは全く勘づいていません

>【死中に活を見る】…自分の命を公平な重さで天秤に乗せたこの20人弱が生きていればこの先袁家がどれだけ楽だったことか
実際、十年単位で人事を考えている袁家にとっては晴天の落雷ですものね
ものっそいコストかけて教育していた珠玉の人材が……
そらもうね、人の情としても、袁家の面子としても全力で潰さないといけないやつになります


あと一話で章が終わります
クリスマスくらいからあっち投下開始かにゃあ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/10(火) 10:58:20.31 ID:lGWgJYZK0
猪猪子は勘で気づいてそう・・・あの子もいざとなったらそういうことするタイプだし
41 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/11(水) 21:17:21.09 ID:YdM4ueeZ0
>>40
ああ、確かに!
猪々子は勘づいて層ですね。
あの子は大切なものを見失いません

じゃけんさっさと逃亡しましょうねー(本編ムーブ
42 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/11(水) 21:55:48.81 ID:YdM4ueeZ0
次々ともたらされる報告に賈駆は時に頷き、時に顔をしかめて次々と指示を飛ばす。
今のところ、想定の範囲内だ。
もとより最善の結果なぞ望むべくもない。時間的猶予などなく、根回しなんて何一つできずに蜂起せねばならなかった。ならなかったのだ。
李儒の要求はただ一つ。――何進の誅滅である。
何進、である。あの馬騰と互角の豪傑であり、この董家軍を引き上げてくれた恩人でもある。そしてその武勇は目の当たりにしている。彼を討つなぞ手持ちの札では呂布しかありえない。
最重要のそれは上手くいった。
だが、後は何とも言えない。
その馬騰については、張遼を宛てた。自刎して果てたというが、まあ、はなから抱き込めるとは思っていなかった。せめて虜囚とできればと思っていたのだが。
それでも、これで馬家軍は敵となる。だがそれもまた想定の範囲内。なに、それでも韓遂を動かせばなんとでもなる。馬騰ならばともかく、馬超相手であればどうにでもなるのだ。
朱儁についてもそうだ。軍権を示せば、万が一くらいには恭順するかと思ったのだが。
それもいい。禁軍の司令官が恭順しないのであれば除くのみ。この洛陽で執金吾たる董家軍の次に武力を抱えるは禁軍。その首魁を除けたのはまずまず。
張遼と陳宮は悄然としていたが、賈駆にとっては想定の範囲内。最悪は避けられたとすら思っている。

「なんですって……」

だが、続く報告にはさしもの賈駆も言葉を失う。
曹操の行方が知れないのはまあ仕方ない。宦官より情報が漏れていたのであろう。しかし、皇甫嵩までその足跡を追えないとは、不覚である。
彼奴はやっかいだ。禁軍にも影響力があり、なにより清流派の首魁の一人。どう蠢動するかなぞ考えたくもない。
苦虫を噛み潰していた賈駆に、とっておきの凶報がもたらされる。

「袁家当主袁紹の逗留地に於いて、現在交戦中!敵指揮官は雷薄!
奇襲により痛撃を喰らうも、現在優勢に戦局は推移しております!」

くら、と眩暈を覚える。
なぜ、と思う。平和裏に袁紹の身柄の確保を命じたのにどうしてそうなる。
それに雷薄だと?
匈奴大戦を生き残り、一兵卒から将軍までに出世したという立志伝の主人公もかくや、というほどの紀家の宿将が防衛戦に立つとはどういうことだ。
なによりどちらから仕掛けた。袁家と仕掛ける意味を分かっているのか。
43 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/11(水) 21:56:15.21 ID:YdM4ueeZ0
「な、なんですって!退きなさい!袁家との交戦は認めないわよ!」

その舌の根も乾かぬうちに派遣した指揮官が袁家の兵卒――あくまで董家軍からしたら一兵卒でしかない――により討たれるという報に呆然とする。

「な、な……!」

転がるように移りゆく戦況に自失する。
そして、貴重な。贅沢なその時間は失われた。

「敵指揮官雷薄討ち取りました!」

誇らしげに報告する士官に罵声を投げるのを辛うじて自重する。
いやあ、難敵でしたなどと得意げに語るその士官の口調に絶望する。これでは、これでは。
いや、自失していてはいけない。今でもできる最善を。

「よ、よくやったわ。天晴れ寡兵にて挑んだ彼の死を汚してはいけない。丁重に扱いなさい!首は塩漬けにしてけして腐らさないように!」

同時に、抵抗した兵卒――それが兵卒でないことには流石に賈駆も思いが至る。主の逃亡を助けるにあたり身を挺して刻を稼ぐなど――についても死体を汚さぬように厳命する。
せめて、せめてそれくらいはしないと交渉の席にもついてはくれないであろう。
袁家は、それくらい情が深いということを賈駆は知っているのだから。

それが幸か不幸かはともかく、である。

「なんでよ。なんでよ。なんでよぉ……」

がくがくと震える身体を抱きしめて、暫し賈駆はうずくまる。

せめてこの震えを配下には見せてはいけない。抱える腕に爪が食い込み数条の紅い筋が流れるのも構わずに。
それでも賈駆は立ち上がる。顔色は白く、唇は朱に染まっても。
44 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/11(水) 21:56:40.96 ID:YdM4ueeZ0
それからの報せは、ことごとく凶報であった。皮肉にも賈駆の想定通りに。
曰く、曹操、行方分からず。皇甫嵩、行方分からず。

曹操はまだいい。宦官を手駒とした時からある程度こちらの動きを察されていたはず。あわよくば巻き込もうとしたが果たせず。
まあ、それはいい。
だが、皇甫嵩の不在は痛い。朱儁亡き今、禁軍に号令をかけられるのは彼くらい。せめて誅滅したかったと思う。
取り逃がした魚の大きさに歯噛みする。

「ほ、北面の大門に於いて袁家の一行を捕捉しました!」

だから、賈駆はそれにすがる。
なんとか、袁紹の身さえ確保すれば。あの、あの男に窮状を訴えればなんとかなるのではないかと。
だから今度こそはしくじるわけにはいかない。

「て、丁重に扱いなさい!ボクが行く!」

目の前に垂らされた蜘蛛の糸に飛びつく。

「二郎さえ……袁家さえ抱き込めば大丈夫、なんとでもなる。二郎ならばなんとでもしてくれる。
 雷薄の討死についてはどうしようもないから、素直に謝ろう。そこで謀ったら取り返しがつかない。
 もう、ボクはどうなってもいいからどうにかして二郎を懐柔しないと……」

馬を急がせながら賈駆はそれでも思考を放棄しない。

そして、彼女を待ち構えるのは、蜂蜜色の髪の、眠たげな少女であった。
紀霊が全幅の信頼を寄せる程立その人である。

「いやあ、これは参ったのですよ〜。風はこの荷物を南皮に届けるべし。可及的速やかに、と指示を受けたのですね」

ですから、夜半に北面の門扉を突破しようとしたのかと賈駆は程立を睨む。

「おおこわいこわい。いや、いささか誉められない手段であったのは自覚してますよ〜。
 ですが、この北面についてはそれが常習化していたようだったので、風は風で最善を尽くしたまでなのです〜。
 いや、これは命乞いをした方がよろしいのですかねえ」

くふふ、とほくそ笑む程立。わざとらしいその笑みはこちらの神経を逆なでるためのものであろう。そんな安い挑発に賈駆は乗らないしそんな暇もない。

「いいから袁紹殿と二郎を出しなさい。貴女じゃ話にならない」

その声に程立はにんまりとほほ笑む。それは微かであるも、わざとらしく、狩人が獲物を罠に嵌めた笑み。

「いやいや、ここにはそんなお偉方はおりませんので、お引き取り願えればと思うのですよ〜。
 無論、洛外に出るのは明日以降にしますので〜。
 こんなところで時間を使ってはいけないのではないですか?
 老婆心ながら風は心配するのですよ。
 ええ、二郎さんと浅からぬ縁のある貴女を風は心配するのですよ」

くふふ、と笑う程立になんと言ってやろうか。いや、そんなことに関わっている余裕すら自分にはない。
この一行の荷物は大きな匣であったり壺であったり。ややもすれば人が隠れるに相応しいもの。

ここで袁家当主たる袁紹。入内を控える袁術。そして彼女らに大きな影響力を持つ紀霊。いずれかを捉えるだけで状況は変わる。変わるのだ。

◆◆◆

――そして程立が率いる一行の、思わせぶりな荷からは誰一人発見できなかったのである。
45 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/11(水) 21:58:27.96 ID:YdM4ueeZ0
本日ここまですー感想とかくだしあー

この章最終話dす

案については 破綻 かなあ

もっと格好いいやつ募集しまくりんぐですよ本当に!
ほんとこれいつもお助け頂いております
ボスケティ

そして、クリスマスめどにあっちで投稿し始める見込みです
頑張るぞいっと。
頑張るので、オナシャス。
46 :青ペン [sage]:2019/12/12(木) 01:27:12.86 ID:3r3X7NyMo
>>45
乙なんだよー

【撒き遅れた毒、飛び立った翼】
かな
47 :赤ペン [sage saga]:2019/12/12(木) 12:09:15.74 ID:tT+/wq930
乙でしたー
>>42
>>苦虫を噛み潰していた賈駆に、とっておきの凶報がもたらされる。 【とっておき】だといざという時の為の隠し玉、みたいな感じなのでちょっと違う気が
○苦虫を噛み潰していた賈駆に、最大級の凶報がもたらされる。   《とっておきの秘策》みたいな感じなので誰が取っておいたのよ?となるので…これでどうでしょう
>>袁家と仕掛ける意味を分かっているのか。  意味は分かりますが
○袁家に仕掛ける意味を分かっているのか。  あるいは【袁家と相対する】とか?
>>44
>>曰く、曹操、行方分からず。皇甫嵩、行方分からず。 上でもこのあたりの事言ってるので一か所にまとめた方が良さそうですね(>>42の曹操の行方が〜考えたくもない。のあたり)
これは>>42の該当部分を削ってこっちにまとめればすっきりしそうかな
>>ですから、夜半に北面の門扉を突破しようとしたのかと賈駆は程立を睨む。     【ですから】に違和感が
○だから、夜半に北面の門扉を突破しようとしたのかと賈駆は程立を睨む。      これはこれで変か?
○ですから、夜半に北面の門扉を突破しようとしたのですとカタる程立を買駆は睨む。 どう考えてもそれ【騙り】だよねと言うツッコミをしつつ

その暴力で適当な宦官やらなんやらの一切合財の鼻と耳を削いで人質にでもした方が良かっただろうに(なお月の生存確率)
向こうは謀略とかにステ振りしてるんだからそっちで争わずに武力で争った方が勝ちの目が大きいのにそうしなかったのは、まあ油断してたんだろうなあ
48 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/12(木) 21:12:57.82 ID:LxwWnE9U0
頑張るぞいっと。

>>46
どもです。

>【撒き遅れた毒、飛び立った翼】
かっこいいやつありがとうございますー!
これはいけるね

>>47
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>その暴力で適当な宦官やらなんやらの一切合財の鼻と耳を削いで人質にでもした方が良かっただろうに(なお月の生存確率)
実際悪手この上ないのですよね。
多分、月ちゃんの髪の毛一房でも贈られてきたら詠ちゃんは何もできませんわ
それが指の一本とかにいつなるか、と。

>向こうは謀略とかにステ振りしてるんだからそっちで争わずに武力で争った方が勝ちの目が大きいのにそうしなかったのは、まあ油断してたんだろうなあ
油断、慢心、環境の違い……

イイ感じに月ちゃんが地歩を固めてましたからね。まさかね。
謀略は仕掛けた方が有利、を地で行く李儒さんです。

李儒恐るべし、ということで一つ。
49 :赤ペン [sage]:2019/12/12(木) 22:13:30.65 ID:tT+/wq930
そりゃもう持ってきた人とその親類縁者を市中引き回しにしてそいつの家は焼き討ちよ
何進と袁家と馬家を敵に回すくらいならこれやってそれ以外を敵に回した方がましだわ
殺したら向こうも董卓をどうするか分からんけど引き回した後は牢屋にでも押し込んでおけば
指一本送ってきたら適当な人一人磔にしてお返しすれば交渉のレートも理解するでしょ(暗黒微笑
天涯孤独の単独犯相手ならともかく敵対しちゃいけない人たちを抜いて残った有名人宅にほんの200人程度で訪問すれば袁家みたいなガンギマリ相手じゃ無ければ楽勝よ
50 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/13(金) 21:02:13.75 ID:SOsEyI0/0
>>49
まあ、テロリストの要求を呑んじゃいけないってのは鉄則ですわなあ……!

ここぞというところで選択を誤るのが詠ちゃんにしてもそれは悪手ですよ(原作無印感)
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/14(土) 10:27:58.76 ID:lc+OwmL60
テロリストの最大のアドバンテージは一方的に攻撃できて相手側に守勢に回らせられることだからなあ
本拠地の割れてる上に明確なトップがいない組織でそれやっても・・・普通なら大鉈(物理)振るって終わりのような
あり得るかはともかく京都とか大阪の府知事が東京じゃなくウチが日本の首都だって武装蜂起(都知事人質)したようなもんじゃろ?
52 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/16(月) 20:55:37.46 ID:71dAkpsp0
>>51
>テロリストの最大のアドバンテージは一方的に攻撃できて相手側に守勢に回らせられることだからなあ
>本拠地の割れてる上に明確なトップがいない組織でそれやっても・・・普通なら大鉈(物理)振るって終わりのような
広義の謀略ですね
そして、仕掛ける方が圧倒的に有利なのですよね。
これが宦官勢力なのか董家のことか分かりませんが、本質はいっしょですわね

>あり得るかはともかく京都とか大阪の府知事が東京じゃなくウチが日本の首都だって武装蜂起(都知事人質)したようなもんじゃろ?
んー?
クーデターだから警察とか自衛隊じゃないっすかねえ。日本には州軍ないですものね。
州軍蜂起が近いのか?
なんにしても武力ですよ武力。
大体のことは暴力が解決するのです。
なお。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/17(火) 10:47:23.19 ID:lOt8Guii0
都知事(皇帝)を人質にしてクーデター起こした警察(董卓軍)を裏で操る府知事(十常待)? や、どっちかっていうと十常待は官僚だけど
野党(何進)がトップになったら首が確定してる官僚とかが近いか
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/24(火) 20:56:57.15 ID:fFMtIlkS0
乙ー
ご無沙汰しております
最近忠臣蔵が恒例の年末再放送されてたので違うのに近しい何かを感じます
幽州や洛陽が北の方で雪も多そうなのもその一つww(実際は乾燥しててあんまり降らないっぽい

凡将伝ならともかく、三国志とか時代劇とかは海外の人には理解も受けもしにくそうだなー
55 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/24(火) 21:26:19.38 ID:oQj4ap7k0
>>54
どもです。

まあ、長いことやってますからねえw
リライトですし。じゃなかった、リトライだ。

>凡将伝ならともかく、三国志とか時代劇とかは海外の人には理解も受けもしにくそうだなー
円卓とか、ギリシャ神話とか受けてますからいけますって。
訳者の筆ちから次第かなって

頑張るぞいっと。


それはそれとして忠臣蔵はねーw
あえて凡将伝的に語るとどうしても吉良上野介側が袁家なのでねw

しかし老人一人、殺しきれない浅野内匠頭って、という評価見て、綱吉さんの偉大さを思い知りましたよ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/27(金) 12:58:07.07 ID:vjuLT/Eo0
稀によくいるから…30代で大暴れしてその後悠々自適。からの主筋が世代交代して「あの老害が敵に回るとヤベえからやっちゃおうぜ」しようとしたら60越えて覚醒する奴
57 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/27(金) 19:32:37.06 ID:0IXAyBNc0
伊能忠敬が浮かんだす
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/28(土) 11:06:13.53 ID:3AfxkL/70
強い爺ちゃんで真っ先に浮かんだのは朝倉さんちの宗滴三かな…そのお方でも撲滅できなかった宗教狂いもマジパネエが
59 :青ペン [sage]:2019/12/30(月) 00:14:59.93 ID:lSoQxd+Mo
個人的には水野勝成かなぁ…
↑30代暴れまくり60でもパネェ
60 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/30(月) 21:18:30.89 ID:iBLF60Rs0
大久保彦左衛門は実際の印象ないです
上泉信綱が最高にして最強というイメージ

個人的には、佐久間象山と大村益次郎が生きてたら歴史がそれなりに変わったと思っています
ですが、どっちも人格がアレなのでどっかで暗殺不可避かなあって

でも万次郎は酷使したいし江川英龍は過労死せんようにしたい

そうなったらどんな世界になったかを観測したいっすなあ
61 :赤ペン [sage]:2019/12/31(火) 22:17:06.57 ID:lLGJ+Qr00
今年もあとわずか…来年もよろしくお願いします
62 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/01(水) 06:56:30.58 ID:lDibUuBz0
明けましたおめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。
今年での完結は難しいですが、なんとかかんとかしたいです。

蕪農家として独立ワンチャンあると思ってます。
頑張るぞいっと。
63 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/02(木) 14:17:46.55 ID:J2kZHEdW0
ようやくあっちの予約投稿終わったわ
しんどかったすわ
明日から頑張ろうそうしおう
64 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/01/03(金) 12:24:50.12 ID:bWmA4woE0
謹んで新年の喜びを言上仕ります(明けましておめでとうございます)

兼業蕪農家としてアドバイスすると、「数こそは力」「忙しなく動くな」「最低利益は常に確保せよ」これですね。
蕪専業なら、撤退資金は絶対必要ですよ。蕪仲買は手数料が命ですんでとにかく動かそうとしますのでね、それもばかにならない。
撤退資金の温存先なら日本国債かなぁ。
そういや専門系にしかニュースになってませんが、例のリクシル騒動。あれで結構損食った人いるとおもいますよ。
私も漬けてますが珍しく追証払いましたね。乱高下が一番迷惑。

さて今年はまずは新しい命に全力です。おとっつあんになるんだし、いやならせてほしいっす(超願望)
年末に靖国の御霊にすがりましたし、新年は氏神様に三回頭下げましたし、なんなら伊勢の御二方にもお願いしておきましょうかね。
「子供の顔が見れたら死んでも」で嫁に思いきり引っぱたかれましたwwwそりゃそうか。

本年もよろしくお願い致します。
65 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 19:41:37.76 ID:LwXD1POj0
>>64
明けましたおめでとうございます!本年もよろしくお願いします。

>兼業蕪農家としてアドバイスすると
やったぜ

>「数こそは力」「忙しなく動くな」「最低利益は常に確保せよ」これですね。
元手がないとリターンがアレっすからねえ
動きは、それなりですかねえ。かつては数百円の利益でキャッキャしてましたw
いやまあ、ランチ代稼げたらええやん!みたいなw
離角が一番難しいですね。上への握力は割と弱いっすわw

>蕪仲買は手数料が命ですんでとにかく動かそうとしますのでね
基本的に自分との戦いなので、卸さんが凸してくることはめったにないですね。
禿Gの時には2回ほどありましたが、その後上司さんからお詫びの連絡がありましたな
あれは空売りでインしたかったw

>例のリクシル騒動
鹿サポなので情報はすっごく見てました。あれはひどい事件だったね(日暮感)
久美子さんHDよりはマシかな?屋台骨まではいかへんかったから。あ、手は出してないです。
まあ、損ぶっこいてるのも多いですけどね、街のホットステーションとかレモン堂とか!
鉄は国家なりはどうしたもんかなってw

>さて今年はまずは新しい命に全力です。
ここは本当にね。本当に。こればっかりは。。。


>嫁に思いきり引っぱたかれましたw
こういうさりげない惚気が素敵なご夫婦だと思います。
健やかなれ。

本年もよろしくお願いします。
66 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:50:07.96 ID:LwXD1POj0
では今年もよろしくお願いしますということで投下します
67 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:50:35.35 ID:LwXD1POj0
董卓、叛す。そして何進、馬騰、朱儁を誅滅。
遺勅により今上帝を廃位。弘農王とする。
弘農王とは劉協の陳留王と比較し、相当位の低い地位である。
劉弁はこれに異を唱えず、大人しく皇位を譲った。
そして至尊の座に就いた劉協により、董卓は相国となり絶大な権力を手にした。漢王朝をその手に握ることになったのである。

その報せは衝撃を以って中華を駆け巡る。

最も衝撃が大きかったのは間違いなく袁家であろう。先帝たる、現弘農王への輿入れに向けて調整をしていた矢先の変事である。
これで動揺しない方がおかしい。
それを何とか抑えきっている沮授と郭嘉の能力と尽力は賞賛されるべきであろう。無論、あらゆる支援を行っていた張紘にもそれはあてはまる。
今のところ袁家の首脳の行方については情報が途絶えている。死んだとも、捕えられたとも伝わってはいないのだが。

「……そろそろ、抑えきれないかもしれません」

常ならば涼やかな笑みを浮かべる沮授が、流石に疲労困憊といった風に呟く。

「いや、沮授はよくやってるぞ。もう董卓の謀反から三か月だ。これまで表立った動きがなかったってのは、すげえことなんだぞ」

張紘の言葉は本心ではあるが、慰めにしかならない。
袁家の今後は誰が担うのか。水面下では動きが本格化している。留守居役が沮授であるのもそれを助長するのだ。
袁家の権力争いからは身を遠ざける彼の姿勢(スタンス)は、能あっても欲なしと好意的に取られていた。彼はあくまで袁家の補佐に徹するというのは袁家の共通認識である。
だから、逆に、である。
誰が袁家を牛耳っても、沮授さえ抱き込めば。と思う輩が出てくる。無論それを座視する沮授ではないのだが、袁家の後継争いに口を出すわけにもいかないという二律背反(ジレンマ)。

「こうなると、いかにも袁胤様の件は痛かったですね……」

まさに痛恨、である。
68 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:51:02.44 ID:LwXD1POj0
袁紹の予備として袁逢は袁術を産んだ。だがその袁術が輿入れとなれば予備がいなくなってしまうのだ。
その座には袁胤があるはずであった。であるからこそ不穏な動きがあっても袁胤は誅されなかったのである。
李儒の一手はこの上なく袁家に深刻な影響(ダメージ)を与えていたのだ。

「幸い、景気はいい。そのおかげで民の動揺はない。
ほんと、それだけが救いって感じかなあ……」

不穏な空気も、目前に迫っていた黄巾の脅威に比べれば雲の上の出来事。目前の好景気により袁家領内の民は落ち着いている。
黄巾賊残党は半ば流民と化して袁家領内に流れ込む。それを養うために大規模な公共工事――大規模農場や鉱山、橋梁建設に街道や港湾整備他多数――が計画、実行される。その需要に応えるために各種生産活動は全力(フル)回転。
それを支えるための財政出動があるが、袁家の金蔵は揺るぎもしない。
治安出動のための軍備の強化も相まって、袁家領内は空前の好景気に沸いていた。
それがあるから、これまで袁家内部の蠢動も抑えられていたのではあるが。

「流石にそろそろまずいですね。
いや、つい数か月前までは袁家は盤石と思っていたのですが……」

肩を落として盛大にため息と弱音を吐く。張紘の前だからこそであろう。
張紘も深く懊悩の表情を浮かべる。ぐったりとした様相の親友にかける言葉もない。

そんな二人を黙って見ながら茶を淹れ、甲斐甲斐しく茶菓子を出していた赤毛の女性――赤楽――が呆れたように口を挟む。

「本当に君ら二人だと辛気臭いな。
あの暢気かつ軽佻浮薄かつ女好きであれこれ厄介ごとを呼び込む御仁がいないと見てられないのだな」

そしてつかつかと歩みを進め、張紘の頬を引っ張り、弾く。
盛大に。

「い、痛いぞ?!」

恋人の抗議の声に赤楽はフン、と呆れたように鼻息を一つ。

「当たり前だろうが。痛くしたんだからな。
 目が覚めたかな?ああ、それは結構。
そもそもだ。あえて聞こうか。これは本気で疑問なのだがね」

やれやれ、といった風の仕草から問う視線は炎。
それが二人を射貫く。

「君らはあの御仁がこんなことで儚くなるなんて本気で思っているのか?」

それは決定的な言。これまで敢えて口にしなかったもの。

「これは手厳しい。確かに二郎君の安否についてはあえて口にしていませんでしたとも。
 ですが、それは最悪を想定していたからこそです。
 備えはしています、が……。
 いえ、これは甘えというものですかね」
「よせやい、おいらだって認めたくなかったのさ。
 それは、思っても、言ったらそうなっちまうんじゃないかって、な」

やれやれ、とばかりに赤楽は肩をすくめる。

「便りのないのは良い便り。あの御仁がこんなことでくたばるはずはないさ。
 君らは義兄弟なのだろう?君らが信じてやらなければ誰が信じるというのだ?」

ニヤリ、と口を歪ませる麗人に沮授と張紘は呆然とする。彼女は最悪に備えろ、と言ったのではなかったのか。
そんな二人の表情を愉快そうに見て再び口を開く。双眸は力に満ち、碧眼は炎すら纏いそうで。

「あの御仁、ひいては仕える主君がこんなことでどうにかなるはずはないだろう。
 考えても見ろ。まあ、袁紹殿の豪運については語るに及ばないよな?
 ここではあの御仁についてだけ語ってみようか」

艶然と微笑む。楽しそうに。
69 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:52:47.10 ID:LwXD1POj0
「たまたまお忍びで市場に来ていたらたまたま居合わせた張紘と私に出会ってその場で口説き落とした。
 たまたまふらりとこれまた街中を歩いていたら李典、楽進、于禁という俊才に出会い、登用した。
 たまたま立ち寄った料理屋で知り合った典韋殿を、たまたま立ち寄った町で見かけ、そのまま登用した。
 武者修行と称して出奔したら旅先で皇族に連なる劉璋殿を助け、誼(よしみ)を結んだ。
 更にその道中で程立、趙雲、郭嘉なぞという傑物が野盗に襲われている現場に巡りあって、なんだかんだで全員登用した。
 ――こんなに天に愛されている御仁がこんなことで果てるわけがないだろう」

文句あるか?とばかりに、どちらかと言えば薄い胸を張る赤楽に張紘は苦笑する。

「いや、すまねえ。確かに二郎は生き汚いからな。こんなことで死ぬはずはないや。
 おいらとしたことがどうにもいけねえや。随分弱気になってたみたいだ」

「そうですね。二郎君ならばそれこそ何をしてでも同行されている方々を無事に送り届けるでしょう。
 いや、女は強しと言うべきですかね?いや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」

言いながらも沮授は舌を巻く。時折見せていた明敏さに加えてこの事態においても全く揺るがない。
彼女であれば袁家内部においても柱石となれるであろう。間違いなく。

「クク、沮授殿。
よしてくれよな。これは岡目八目という奴さ。私にとっては結構他人事だからな?
 おのずと見える景色も違うというだけさ。
 ウン、そうだな。もっと言えば一度死んだような身さ。だからあれこれ好き勝手に言えるってだけ。そしてね」

――身一つで惚れた男一人ならばいかようにも養ってみせるさ。

そんな、無言の悪戯っぽい目線を受けて沮授は苦笑する。

「そうですね。僕らの動揺。それはたちまちに波及してしまうでしょう。そうですよね。
 いや、今日はご馳走様でした。色んな意味でね。
 二郎君が帰ってきたときに余計な気苦労を背負わせないようにするとしましょうか。
 ええ、本当にご馳走様でした」

訪れた時と同様に、にこやかに。しかし含んだ表情は変わって明るく、沮授は席を立つ。

「なに、漢朝全てを敵に回してもお釣りがくるほどですよ。気楽にいくとしましょう」

それも全てはあの男が無事であったならば、である。
言外のそれを理解して張紘も笑う。

「二郎は楽をしたがるからなあ。だったら先回りして徹底的に楽をさせてやるってのもいいな」

「それはいいですね。
 いつも二郎君には驚かされてばっかりですから、たまには僕らが驚かせてやるのもいいかもしれません」

「その時の二郎の顔、見てみたいもんだな。
 いやあ、楽しみが増えたな」

軽口を叩く二人を見て赤楽は暢気にむしゃり、と茶菓子を頬張るのであった。
70 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:54:01.09 ID:LwXD1POj0
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案
「その頃の南皮 男子会編」

いまいちなので、もちっとおセンチなのオナシャス。
71 :青ペン [sage]:2020/01/04(土) 03:19:21.77 ID:o6ZV7E2Fo
>>70
新年乙ー。
んー、そうね。
【時の奔流に抗うは龍の担い手】
かなぁ
72 :赤ペン [sage saga]:2020/01/04(土) 16:48:56.35 ID:9aX5fMzJ0
乙でしたー
>>69
>>いや、女は強しと言うべきですかね?いや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」    間違いでは無いですがちょっと【いや、】と言いすぎかな?
○いや、女は強しと言うべきですかね?いやはや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」  それとも先の方を【いやはや……女は強し】にしたほうが良さげかな?

今回はペケマーク付けるような部分は無かったのでムリクリ一か所
袁紹様以下主要な人員の生死不明は痛いよね…雷簿に付き従った100人足らずもその全員が次代の幹部候補だったし
むしろ幹部になったら迂闊に外に出れなくなるから今のうちに首都の観光しとこう、みたいな感じだったのかもしれん
それにしてもこうして見るとやっぱり違和感…怠け者の劉弁をわざわざ廃さなくてもそのまま何進の後釜に座っても良かっただろうに
劉協に配慮する必要がどこの誰にあった?逆に劉弁が病気を拗らせなかった(を殺さなかった)理由は?あの3人は殺すしかなかったといえばその通りだけどそれで言うなら求心性のある劉弁も殺すしかなさそうだけど
この辺考えるとあの怠け者も結構面白いことになりそう
73 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 19:25:58.98 ID:5YCEdtDt0
>>71
どもです。

>【時の奔流に抗うは龍の担い手】
かっけえ
時の奔流はいいですね。これは使うかもですよ本当に!ありがとなす!

>>72
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>今回はペケマーク付けるような部分は無かったのでムリクリ一か所
滅茶苦茶久しぶりですねそれってw
頑張るぞいっと。

>袁紹様以下主要な人員の生死不明は痛いよね…雷簿に付き従った100人足らずもその全員が次代の幹部候補だったし
割とこれはマジでしんどい
マンチェスターUのボビーさんが味わったアレよりしんどいかもしれないっす

>むしろ幹部になったら迂闊に外に出れなくなるから今のうちに首都の観光しとこう、みたいな感じだったのかもしれん
それはあるかもしれません。幹部候補生の交流もかねた、あれか、修学旅行的な!

>それにしてもこうして見るとやっぱり違和感…
ご考察楽しみにして、ますーw
太陽と月のあれ、好評でしたよ!
74 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:32:34.44 ID:5YCEdtDt0
郭嘉は手元に届いた書付にため息を漏らす。
どこをどうやったのか、厳重に情報封鎖されている洛陽からの便りである。送り主は、彼女の親友。

「反董卓、連合。ですか……」

その五文字のみが記されていた書付。巧妙に隠蔽されたそれにより、親友の無事を知る。
そして苦笑する。大きく出たものだ、と。
今の袁家にそのような余裕はない。内部の権力闘争を押さえるのに精いっぱいなのが現状。
矢継ぎ早に出された大規模投資計画により、官僚の業務負荷を増大させて暗躍できぬようにするのもそろそろ限界であろう。
そもそもの根幹に対しては何ら対策を打てていないというのが実際のところである。

……こうなると郭嘉が重用されるようになった経緯、後ろ盾であった存在――無論紀霊その人である――そのものが足を引っ張る。
郭嘉の能力は万人が認めるものではあったのだが。

「おやおや、これはどうもお疲れの様ですね。少し休まれた方がよいかもしれませんね」

声をかけてきたのは、今や袁家の屋台骨を一身に支える沮授である。
貴方こそ憔悴しきっているではないか。
そう言ってやろうとして振り向く。そこには、にこやかな笑みはそのままで、見違えるように生気に満ちた表情である。
誰だこれは、などと思う。
いや、涼やかな笑みに胡散臭い香りがまとわりつく。そういえば沮授という人物は本来こういう感じであったか。

「……。
そうですね。正直、見違えました」

郭嘉の言に沮授は笑みを深める。
くすり、という笑みの口元にはごまかされない。鋭い視線が周囲を睥睨しているのだ。
ふむ、何があったか知らないが本調子に至ったということであろうか。
探る郭嘉の視線を真正面で受け止めて尚笑みは柔らかく、深い。

「いや、正直僕も追い詰められていたようで。知人に叱られましたよ。
 辛気臭い、ってね」

一体誰がこの青年にそんな言葉を投げることができるのだろうか。さしもの郭嘉も言葉を失う。

「いささか、現状維持に汲々としすぎたかもしれません。袁紹様や二郎君が帰還した時にこれでは呆れられてしまいます。
 いかにも袁家の首魁となるには権謀術数に長けねばなりません。ですがそれでは足りません。
 さて、蠢動する方々。様々です。
 郭嘉さんから見てどう思われますか?」
 
75 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:33:00.60 ID:5YCEdtDt0
ふむ、と郭嘉は幾人かの顔を思い浮かべようとするが、どれもこれも小粒にすぎる。
なるほど。袁紹というのは傑物なのだと今更ながらにそう思う。
彼女の日輪の如き光輝が目に焼き付いているためであろうか、有象無象はいずれも取るに足りない存在に思えてしまうのだ。
なるほど。

「――陰謀ごっこで袁家を牛耳って、私たちの主人面しようとする凡骨たちが多いなと思ったものです。
いえ、夢想するのは勝手です。ですがその夢に酔っているのに付き合うというのは実際苦痛でしかないですね」

我が意を得たりとばかりに沮授は微笑む。
なるほど、本来の彼はこうなのかと郭嘉は内心で沮授という人物の評価を改める。
唯々諾々とした官僚かと思えば、こんなにも覇気があるのではないか。袁家の差配を任される訳である。
非常時にこそ、その人物の真価が発揮されるというのは誰の言葉であったろうか。
なるほど。

「ええ、そうですね。袁家の本領は武に在ります。袁家に覇を唱えるのであれば、武勲なくしては叶わぬというのは必然というもの。
 ええ。袁家の当主が滞在する邸宅を襲い、紀家の宿将を討つ。このような暴挙に対して黙するなぞありえません。
 一当てせねば武家として面目が立ちませんもの」

いささか挑発的な言を郭嘉は吐く。
探るような視線の郭嘉に沮授は応える。にこやかに。

「そうですね。大義名分なぞ勝ってから考えればいいでしょう。
 まあ、必要最低限のことは陳琳さんにお任せするとしましょうか」

沮授の言に郭嘉は声を出して笑う。ああ、それは適任だ。さぞかし名分を起草してくれるだろう。

「では。そちらのあれこれは、お任せしますよ。流石に僕が出るわけにはいきませんから。
 取りあえずはお任せします。二郎君が惚れこんだ軍才、当てにしていますよ?」

す、と眼鏡を整えて郭嘉は応える。
託されたものを確認する。

「では、任されました。これより袁家は反董卓連合を糾合します。
 まずは涼州に遣いを出し、馬家軍と連携を謀ります。これにより二正面作戦を強います。
 此方は、まず星を如南より呼び戻して兵を率いさせます。襄平よりは公孫賛殿を招聘。彼女の白馬義従あれば董家軍の騎馬軍団に伍することも可能でしょう。
 そして南方よりは孫家に派兵を求めます。最悪将だけでも。彼方は歴戦。客将としても使い様があります」

次々と流れる郭嘉の言。それに沮授は満足げに頷く。流石である、と。
眠れる獅子はいよいよ起きようとしているのだろう。

郭嘉が語る百の戦略に対して、沮授は千の内憂を想定する。
それらを全て平らかにして、沮授は微笑むのだ。

そして、郭嘉という軍事的才能の塊がいよいよ本領を発揮することになるのはこれ以降のことである。
76 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:34:21.19 ID:5YCEdtDt0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は

「臨戦」
「臨戦、その前に」


なんかいまいちなので、格好いい奴オナシャス
77 :青ペン [sage]:2020/01/05(日) 08:27:00.38 ID:viekSq/jo
>>76
乙なんだよー
前回の流れから【龍の背に乗るは鬼才】
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