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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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20 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/25(月) 22:23:11.36 ID:sTNFGTqg0
「そおおおおおおおおおおおおおおおい!」

斗詩のその運動エネルギーを、ベクトルを上方に置換する。捕えた足からもたらされる運動エネルギーを全て上方に変換して跳ねあげる。いけ! 
ぶち、と筋肉の切れる音が内側から響くのも構わずに。

「ああああああああああああ!」

猪々子の絶叫がかすかに耳に入る。
そう、これは昔日によくやった遊びの延長。どれだけ高く飛べるかを競ったそれの延長。
違うのは、その行為にかかっているものが大きいということ。

見れば、ぎゅん、と斗詩は上昇を続ける。跳んでいく。斗詩の運足の妙あってのことだ。俺や猪々子ならば城壁にぶち当たってしまう。

ぐんぐんと上昇し、その最頂点に達しても流石に城壁の頂上には届かない。だがそれは織り込み済み。

ギン!と鋭い音が響く。いつの間にか手にしていた双剣を、見事詰まれた石の隙間にねじ込んだのだ。

「――ふう、うまくいったか」

「そう、みたいだね。
 よかったぁ」

ぎゅ、と猪々子が後ろから抱きついてくる。僅かに振るえているのはそれでもやはり心配なのだろう。
これからが斗詩に無茶振りした正念場である。

「きっと、大丈夫だよね?アニキ……」

双剣だけを頼りに、少しずつ斗詩が登り始める。石の隙間に双剣を突き立て、その身体をじり、じりと持ち上げていく。
突風の一つもあれば飛ばされそうなほどそれは危うくも見える。

「斗詩さん……」

心配そうに麗羽様が俺に縋り付いてくる。美羽様は無言でぎゅ、と。

ええい、見守るだけの身が情けない。
急速に力が抜けていく感覚に身を委ねながら、俺は無言で斗詩を見守ることしかできない。

どれだけの時間が過ぎたのだろう。永劫とも思えるそれは案外そうでもなかったのかもしれない。
じりじりと、それでも確実に上る斗詩。まあ、たまに剣が弾かれた時にはもう心臓がタップダンスを踊ったものだが。
それでも、ようやくに城壁の上に到達したのを見て。

「よ、よかったあ」

門扉が警戒されてるならば城壁を越えればいいじゃないというのを通しきったのだが、精神的に疲れた。いや、多分一番疲れたのは斗詩だろうけども。

「はいはーい。二郎さんは周囲の警戒お願いしますね。ここまできて捉えられたら意味がないですし」

にこりと笑って七乃が壁際に立つ。
――呆けていた俺たちに代わって周囲を警戒していてくれたのだと今更ながらに気づく。
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