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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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34 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/04(水) 21:59:00.41 ID:c1wVtIMX0
◆◆◆

「呂家軍の将軍様。
 ご進言が。ご進言があるのです」

気弱げな口調、しとやかな仕草。女官としての気品、そして漂う色気に対した呂家軍の士官は。

「ほほう、どうしたというのかね」

前に出てしまう。

「ああ、そこにいられましたか。
 耳寄りな情報がございます。お求めになっているものです」

歩を進める女官がしゅるり、と帯を緩める。
媚びを売ろうというのであろうか。その身体で何かを贖(あがな)おうというのであろうか。
その期待にごくり、と生唾を飲み込み、更に数歩進み出る。

ゆるり、とした運足。ゆらりとした脱衣。彼女が場を支配していたからこそ、達した。

「しゃおらぁあああああ!」

闇に紛れての一撃。衆に混じりて成した会心の一撃。まさか後方から、自軍から成されるとは思ってもみない。
だからそれはまさに必殺。

会心の雄叫びを上げるのは、これもまた如南攻防戦の英雄。
兵士を、領民を鼓舞し士気を高止まりさせた口先の英雄。
そして今ここに、口先だけではないことを証明した。彼の手にした鉄鞭は見事に指揮官の頸椎を砕き、返す一撃で顔面を粉砕する。

「は、ちょろいもんだぜ!」

残心もそこそこに先の女官に並び立つ。
両者が纏うのは黒装束。

「あはは、流石だね!
 知ってたけど、ここでそうくるかー。
 私がやっちゃうつもりだったんだけどなあ。
 これは、負けてられないなあ」
 

すらり、と女官が構えるのは鉈、のようなもの。
男と背を合わせ、周囲を睥睨する。

「まあ、俺だってたまにはいいとこ見せないと、な」
「そうだね。うん、すっごく格好よかったよ」
「俺に惚れたら火傷するぜ?」
「だったら、それもう手遅れ、かな。今更だし。
 全身火まみれで、燃え上がっちゃったよ」

軽口を叩く二人を取り囲むのか、袁家邸宅に突入するのか。指揮官なき董家軍。
その揺れを歴戦の雷薄は見逃さない。
轟く声。
重低音のそれは場に響き渡る。
かつて紀霊が、夏候惇にすら匹敵するとまで評したそれは場を支配する。

「総員、突撃ぃ!
 袁家の存亡ここにあり!踏ん張れい!」

指揮官先頭は紀家の伝統とばかりに雷薄は吶喊する。連携なんぞは激戦のうちに生まれるものである。
そして、力の限り足掻いて見せよう。
それが今の自分にできる最善であると信じて。
手にした得物を振りかぶり、矢嵐を受けながら雷薄の口元はニヤリと吊り上っていた。
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