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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 10 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/11/20(水) 21:18:26.40 ID:trIZpCq90
- 「アニキー荷物こんなもんかな?」
「おう。金目のもんは置いてけ。時間稼ぎになる。時間が金で買えるなら安いもんさ。
服も着替えろよ。絹の服とかいっぺんでばれるからな」
うっそりと言うと、えへへ、とばかりにすり寄ってくる。
「分かってるってばー。そこいらへん、アニキの分も含めて斗詩が用意してくれてるよ?
それはともかく、姫にはアニキからよろしくなー」
やっほうとばかりに身を翻して駆けていく猪々子。いや、なんか元気をもらった気がする。というか。
あんな目で見られたら、へこんでられんわなあ……。
「もう、ごわごわしますわねえ。それにこう、安っぽいというか、無粋と言うか……。
いやですわ二郎さん。そんな、見ないでくださいな。見れたモノではないと云うのはわたくし自身が一番分かっておりますの」
粗末な、つぎはぎだらけの衣服を身に纏って麗羽様と美羽様が。
「や、正直これほどまでとは思ってなかったですよ。
こんなにも、纏う衣服に関わりなく光輝あるとは思いませんでした」
いや、隠密行動するためには本当に駄目なんだよ。なんか満足げな姉妹にこれを言うのは気が咎めるなあ。
でも逡巡する余裕もないしなあ。
「どうしましたの?」
「いや、そのですね。お二方の光輝が隠しきれないのですよ。主に、その輝く御髪(おぐし)で……」
麗羽様に至ってはくるくる縦ロール全開なのだ。
なんでも専用のセットのための器具があるらしい。歴史考証仕事しろ。
俺の言葉に麗羽様は苦笑して美羽様に顔を向ける。
「美羽さん。時として美しさは罪なのです。どうやらわたくしたちはその存在だけで世界の注目を集めてしまうようですわ」
「むむ、麗羽ねーさま。よくわからんが、それはまずいのではないかや?」
「その通りですわ。ですから、こうするのです!」
ばさり、と金色の欠片が地に墜ちる。
手にした短刀で麗羽様が自らの御髪をばっさりと切り捨てたのだ。
「美羽さん、よろしいですわね?」
無言でこくりと頷く美羽様の、蜂蜜色に輝く御髪をいっそ無造作に。
「二郎さん、これで身軽になったでしょう?」
ええと。
お流石でございます麗羽様。
でも。
「あ、あんなにお見事な御髪でしたのに……」
そうするべしと思っていても、口から出るのはそんな言葉。いや、軟弱者!
そんな風に思うのは感傷なのだろう。それを覆い尽くすが如く、暴風が吹き荒れることになる。
「はいはーい。これでもくらえ!ですー!」
ぶはり!とばかりに視界が灰色に染まる。
「みなさん、もっと薄汚くないといけませんよー」
どっから集めたか知らんが、大量の灰を俺たちにぶつけて七乃はにこやかに笑う。
――抗議の声を上げられなかったのは。彼女が、七乃が。
普段は絶対に身に付けない黒装束に身を纏っていたからだ。
どうやら、本当に生きるか死ぬかの局面なのだな。
「それでは、参りましょうか」
「頼んだ」
そうして俺たちは、洛陽の夜闇に踏み出すのであった。
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