異説 ひのきの棒と50G
1- 20
52: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:24:21.49 ID:aGyuAlWz0
  
 鉄の臭いに紛れ、どこからか肉の焼ける香りが漂ってきた。
 在りし日の母の後ろ姿を少年は思い起こすが、そんな穏やかな朝を迎えられるはずもない。

 ならば、焼けた肉の香りは―――いったいどこから。
以下略 AAS



53: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:24:52.11 ID:aGyuAlWz0

「そこにいるのは誰だ」

 ふいに、掛けられた声に少年の小さい体がビクリと跳ね上がった。
 慌てて声の方を振り向くも、街は闇に包まれている。
以下略 AAS



54: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:25:52.36 ID:aGyuAlWz0

 大通りを静かに進む。
 気配こそ感じられないが、そこかしこに人間大の影の塊が横たわっている。
 漂う血の臭いに、それが何であるかは言うに及ばないであろう。
 願わくば、その幾分かでも魔物のものであったのならば。
以下略 AAS



55: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:26:36.45 ID:aGyuAlWz0

 焚かれた炎の中には、戦士たちの亡骸で小山ができている。
 火に巻かれながらも小山が崩れずにあるのは、彼らがプレートアーマーを着込んでいたからであろう。
 その亡骸の多くは、正門前から前線を押し込まれた正規兵たちであった。

以下略 AAS



56: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:27:08.68 ID:aGyuAlWz0

「早く火を消して弔ってさしあげましょう」

「ならぬ」

以下略 AAS



57: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:27:35.35 ID:aGyuAlWz0

 領主の言葉に、少年は病に倒れる妹の姿を想像した。
 そして、少年は自身の浅はかさを恥じた。反目する前に、その言葉の意味を熟慮するべきであったと。 
 
 領主は、口をつぐんだ少年を気にも留めず、落ちていた松明に火を灯した。
以下略 AAS



58: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:28:04.09 ID:aGyuAlWz0

 少年が無言で肩を貸すと、領主は一言「すまない」と呟いた。
 戦火は広場から先には及んでいなかったようで、道端の家々に荒らされた様子はない。
 
 だが、その平穏も僅かな間しか続かなかった。
以下略 AAS



59: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:28:34.03 ID:aGyuAlWz0

 領主が、一体の魔物の亡骸に松明を近づける。
 狼の頭をもちながら、二本の後ろ足だけで歩いていた魔物だ。
 その大きな目を極限にまで見開き、口からは泡をあふれさせ、尋常ならざる形相で息絶えている。

以下略 AAS



60: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:29:01.70 ID:aGyuAlWz0

 そんな少年をしり目に、領主はくつくつと笑い始めた。
 魔物たちの作り上げた地獄を眺め愉快に笑うその姿は、おとぎ話で知る邪悪な魔王そのものであった。

「いったい、何を為されたのですか」
以下略 AAS



61: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:29:28.77 ID:aGyuAlWz0

 少年の脳裏に、昨夜の豪勢な晩餐がよぎる。
 人々に食べ尽くしようがない大量の料理。
 その残された皿の処遇に、わずかながらの罪悪感を抱いたが。
 領主が、それを無駄にすることは無かったのだ。
以下略 AAS



62: ◆CItYBDS.l2[saga]
2024/04/17(水) 17:30:03.69 ID:aGyuAlWz0

「妹を探してきます」

 館のあまりの惨状に、少年の不安が搔き立てられる。
 館には、少年の妹が預けられていたはずだ。
以下略 AAS



84Res/42.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice