25:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:48:05.05 ID:I2AyKHWk0
女子中学生がふたりだけで宿泊施設に泊まれるものなのか。
内心疑問に思いながらチェックインの手続きをする向日葵を後ろから見ていたが、特に何かを聞かれることもなく普通に部屋まで通された。
向日葵に大人っぽい落ち着きがあるからだろうか。櫻子は少しだけ唇を尖らせた。
用意されていた部屋は驚くほどいい場所で、櫻子は思わずきょろきょろと見渡してしまい、「恥ずかしいですわ」と向日葵にたしなめられた。少し若めの女将がいそいそとお茶を淹れながら、館内や周辺施設の説明をする。
夕食の時間などについて一通り決め、しずしずと女将が出ていくと、ようやく一息つけそうな時間が訪れた。
26:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:48:40.67 ID:I2AyKHWk0
その後しばらく目の前の問題に打ち込んでいたが、いつもの三割ほども集中できておらず、言い様のないもどかしさを櫻子は感じていた。
もともとこんな勉強は、ふたりきりの空間で静かにしていては気まずくて間が持たないから、逃げ場を作るために始めたようなものだった。
けれど、窓際に座る向日葵だけはなぜか妙に落ち着き払っていて。
部屋に置いてあった観光地情報の資料をゆっくり読み込んだり、また目を細めて外の景色を眺めたりしていた。
27:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:49:15.66 ID:I2AyKHWk0
温泉街をしばらく散策して、部屋に戻り。
びっくりするくらい豪華だった夕食を部屋で済ませ、ふたりは温泉へ向かった。
少しずつ少しずつだけど、ふたりの間に言葉数が増えていく。
必要に応じてする会話だけではない、雑談などが増えていく。
28:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:51:14.12 ID:I2AyKHWk0
ふたりで使うには大きい和室の真ん中に、布団が並べて敷かれている。
櫻子はその片方にぽすんと倒れ込み、向日葵は部屋の明かりを落とした。
「ほんとに今日はずっと勉強してましたわね。お疲れ様」
「……あんま集中できなかったよ」
29:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:51:50.64 ID:I2AyKHWk0
向日葵はマッサージの体勢からそのまま櫻子の上にもふんと覆いかぶさり、浴衣の上からもぞりと手を忍ばせて、まるまると抱き込むように櫻子を包んだ。
予想外の言葉と突然の深い抱擁に包まれ、櫻子はあわあわと動揺する。
向日葵はそんな様子を気にも留めず、櫻子の耳元で淡々と続けた。
「今日一日、あなたのことを見てて……気が変わっちゃったんですわ」
30:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:52:42.96 ID:I2AyKHWk0
しばらくして、さすがに暑すぎるといってギブアップした櫻子は、向日葵の下から這い出て、もう一度温泉で汗を流したくなるくらい火照ってしまった身体をぱたぱたと冷ました。
向日葵はその様子を微笑ましく見ながら布団の上に座り直し、櫻子に向き直った。
「改めて、言わせてください。あなたのお手伝いがしたいって」
「向日葵……」
31:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:53:18.87 ID:I2AyKHWk0
「今日一日、ずっとそばにいて……やっぱり、わかったことがあります」
「……」
「私……あなたのこと、好きなんですわ」
「っ!」
32:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:54:02.65 ID:I2AyKHWk0
翌日。
櫻子と向日葵は早々にチェックアウトを済ませ、電車を乗り継いで一緒に帰宅した。
櫻子は大室家へ、向日葵は古谷家へ。しかし向日葵は勉強道具を用意すると、すぐに大室家のリビングへ向かう。
昔みたいな光景が、また大室家に戻ってくる。
33:名無しNIPPER
2023/09/08(金) 03:47:47.33 ID:+C83K3zX0
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