51: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 22:57:41.21 ID:1bYMbS4jO
「これは、純美雨さんが魔法少女になった経緯とも関係があります。美雨さんの許可を
得ていないので詳細は語れませんが、南凪区で数年前、警察と犯罪組織がグルになって、
蒼海幇を追い込んだ事件がありました。最終的には、返り討ちにしたんですけど」
「初めて聞く話だよ……」
「いろはさんが神浜に来る前のことですから、知らないのは無理もないですよ。
52: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:03:09.22 ID:1bYMbS4jO
「そうですか、残念です」
「ななかさんの意向ですから仕方ないです。でも、言伝を頼まれました」
「なんでしょうか?」
「この事件は裏を辿れば、いずれは魔法少女に辿り着くかもしれない。
時期が来るまでは、お互いにかかわらないほうがいいと」
53: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:05:39.43 ID:1bYMbS4jO
(魔法少女の存在は、既に裏社会で知られているんじゃ?
行方不明だった十代少女は、もしかして……)
歩行者用信号が青色の灯火へ変わった頃、屋外ビジョンは別の事件を報道していた。
いろはは帰宅を急いで交差点を渡り、駅へと入っていった。
54: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:08:59.32 ID:1bYMbS4jO
エミリー休憩所へ向かう前日。
みふゆは予定通りみかづき荘を訪れて夕飯に同席し、やちよに近況を聞かれる。
最近の受験勉強の進捗は良好で、薬学部受験合格も現実味を帯びてきているという。
無理をしているのではないかと疑いをかけられるも、心配無用と一蹴し、食事は進んだ。
この日も鶴乃は父親の看病にあたっており、みかづき荘の住人にメールが届いていた。
55: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:12:11.99 ID:1bYMbS4jO
「この素案に並べられた言葉の数々は、どう贔屓目に見ても目上の人間が、目下の人間に対して
用いる表現としか受け取れませんし、柔らかい表現に直しましょう。……と言いたいところですが、
梨花さんへの要求は、出席者全員から反対されるでしょう。特に梨花さんと明日香さんは」
「どんなふうに反対されてしまうでしょうか?」
「魔女相手に能力を行使することは躊躇わないでしょう。ですが、今回の能力行使先は、
56: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:14:37.38 ID:1bYMbS4jO
「心情とでも言いましょうか。人間とは男も女も感情の生き物ですからね。
この素案だけを持って行って交渉したとしても、表現がどうであろうと、
断られるかもしれません。梨花さんだけでなく、雫さんもどう出るか……」
「雫さんがマギウスにいたことは知ってますけど、どういうことでしょうか?」
「……こういうことを言えた立場ではないのですが、マギウスがまだ存在していた頃、
57: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:16:27.00 ID:1bYMbS4jO
「もうこんな時間ですね。ワタシは大丈夫ですが、いろはさんはどうですか?」
「すみません、少し瞼が重くなってきました……」
「案は多すぎても却ってまとめられませんし、半日では時間が足りない。
魔法少女の能力に頼る案、頼らない案で分けて、現実的な案を選ぶ。
選んだ案は、明日の……と言っても、既に日付が変わってますけど。
58: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:21:29.78 ID:1bYMbS4jO
いろはとみふゆが目を覚ました時、時間は午前九時を回っていた。
着替えを済ませて居間に移動すると、二人分の朝食が食卓に用意されており、やちよがソファに腰掛けてテレビを見ていた。
「おはようございます、やちよさん」
「やっちゃん、おはようございます」
59: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:23:51.72 ID:1bYMbS4jO
みかづき荘を出発した二人は、道中、特に何事もなくエミリー休憩所へ到着する。
開場と同時に着いたが、木崎衣美里の他に、W−1、W−2計画の支援チームに
名前が挙がっていた魔法少女が全員集まっていた。
いろはとみふゆが挨拶をすると、梨花が返事をした。
60: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:25:39.11 ID:1bYMbS4jO
しかし、二つの案は付け焼刃同然で作成したもので、とても代案とは呼べなかった。
あくまでも心情を考慮したものでしかなく、魔法少女の能力に頼るのが最適解だった。
二つの代案に視線を落としていた雫は、小さく肩で溜息をついて顔を上げる。
「……ミラーズは海外に繋がる鏡があるか分からないし、ミラーズを使うのはリスクが高すぎる。
61: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/07/27(水) 23:28:45.97 ID:1bYMbS4jO
「まなかの能力は伝搬ですが、どう協力すればいいのでしょうか?」
「W−2で海外に出たとき、かごめさんの風の伝道師のウワサが翻訳した言葉を、 その場にいる全員に伝えてほしいんです」
「なるほど。それですと……残念ですが、まなかは力になれそうにないですね……」
「それは何故でしょうか?」
「まなかの伝搬は、魔法の力を宣伝することで、敵にダメージを与えるというものなんです。
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