234:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:02:07.15 ID:XVB8s0iW0
1 迷える怪物
スパーダが人間界に本格的に関わりだしたのは、
ヴィグリッドの支援兵団入りから約千年ほど前である。
235:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:02:36.13 ID:XVB8s0iW0
そうして彼はすぐに行動を開始した。
まずは魔帝から提供された人間の「検体」で基礎知識を得た。
この人間たちは、魔帝が配下の悪魔らに拉致させてきたものである。
236:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:03:17.98 ID:XVB8s0iW0
根本的に武と力にしか関心が無いゆえに、
どんな対象でも武と力の物差しによって評価する、
そんなスパーダからすれば、人間はまさに驚くべき種だった。
237:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:04:00.88 ID:XVB8s0iW0
そしてその際限がないスパーダの好奇心は、
己の身で直接体験するという彼お馴染みの手法によって発揮された。
スパーダは人間社会の内部に堂々と踏み込んでいった。
238:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:04:35.21 ID:XVB8s0iW0
ロキ捜索が完全に暗礁に乗り上げていたこともあって、
スパーダは人間研究により没頭していった。
入念に観察し、「検体」を採取し、実験を繰りかえして精査し、
239:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:05:01.38 ID:XVB8s0iW0
人間の思考と行動を模倣して直接体験する、
とくに調和や慈愛を味わうことになるなんて、
基本的に悪魔にとっては苦痛と屈辱しかなかったが、
スパーダは全く気にしなかった。
240:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:06:57.59 ID:XVB8s0iW0
そのように人間の要素を徐々に取り込むことで、
スパーダは他の悪魔には不可能な知見を獲得していくこととなった。
中でもとくに彼を興奮させたのは、もとい認識を改めることとなったのは、
先に人間界に抱いていた「散漫で濁った世界」という否定感だった。
241:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:07:28.85 ID:XVB8s0iW0
中でももっとも振り幅が大きかったのが「愛情」であった。
愛情には明確な境界などなく、
あらゆる衝動から転化し、またあらゆる衝動にも転化しえた。
242:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:08:06.57 ID:XVB8s0iW0
人間の不安定な感情や思念をも取りこむ、
これは自我の変質どころか悪魔の範疇をも外れかねないものであり、
まともな魔族ならば絶対にやらなかった。
しかしスパーダはやはり違った。
243:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:08:55.73 ID:XVB8s0iW0
自覚した時にはすでに遅かった。
人間のことを研究材料としては見られなくなっていた。
彼らに行ってきた研究は害悪であり、それを「非道」だと思うようになり、
それを行ってきた己に怒りをも抱いてしまう。
244:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:09:30.68 ID:XVB8s0iW0
その毒はもはや止めようがなく、
スパーダは次第に己の在り方をも見失いはじめた。
武力探求をもとめる生来の衝動と、
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