241:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:07:28.85 ID:XVB8s0iW0
中でももっとも振り幅が大きかったのが「愛情」であった。
愛情には明確な境界などなく、
あらゆる衝動から転化し、またあらゆる衝動にも転化しえた。
大義や忠誠、無上の献身にも、
憤怒や憎悪、嫉妬や浅ましい欲望にも、
ありとあらゆる思念や感情に直結し、溶け合うこともできた。
さらにそれらによる感情発露の強さも並外れており、
人間たちを頻繁に非合理な行動にも駆りたてるほどだった。
そして、そうした精神活動が彼らの才と正しく結合すれば、
魔女や賢者に代表される「人間の強さ」が発揮されうる。
たとえば魔女を魔界傾倒という困難な道へ突き動かし、
そして困難ながらも成功させたのも、一族の未来を守るため、
より究極的には子を守る母親としての愛情が根底にあったためである。
これら判明した人間特有の「強さ」は、スパーダを久々に真に興奮させた。
この魔族とはまったく異なる形で得られる「強さ」とは、
彼にとっては未開拓の新系統の分野、まさに新たな力の宝庫だった。
そしてスパーダの探究心はより加速し、
その手法もさらに踏み込んだものになっていった。
部分的に人間の要素を己に組みこむだけではなく、
思念や感情といった根幹部分の全てを一気に取り込もうとした。
だが、それは悪魔視点からすると大いなる「過ち」だった。
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