22: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:21:19.10 ID:FpkFq5Eu0
あれ? 弓塚まで地獄に落ちたような表情だ。
何で前の席に座っている弓塚の表情がわかるかというと、さっきからテンポが早いメトロノームにように教壇に立つアルクェイドと俺を交互に見ているからだ。
首をあまりに酷使しているせいか顔が真っ青だけど、大丈夫なんだろうか?
「えへへ。まだまだ語りたい事はいっぱいあるけど、これ以上は怒られちゃうからそろそろ授業を始めます」
23: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:22:03.98 ID:FpkFq5Eu0
※ ※ ※
「はい。それじゃあ87ページ二段落目からの英文を――」
24: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:22:48.23 ID:FpkFq5Eu0
早押しクイズのように今か今かと手を挙げようとしていた男子たちを制止すると、アルクェイドは座席表を手に取る。
「先生が授業をするうえでやりたかった事の一つにね、これがあるんだ。
今日は〇×日だから、出席番号〇×番!」
25: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:23:40.65 ID:FpkFq5Eu0
「ねえねえ、そこの貴方。名前は大野……絆琉《はんる》で合ってる?」
「アル美先生。わたしの名前は絆琉《ほたる》って読んでしまうんです」
「ご、ごめんなさい絆琉ちゃん。間違えちゃって」
26: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:24:37.06 ID:FpkFq5Eu0
ヤケになったアイツは唐突に俺を名指しした。
待て待て、おまえ生徒はフルネーム呼びで“くん”か“ちゃん”を付けていたよな?
なんで急に下の名前だけで呼び捨てにしてんだ!
「あっはっは。アル美先生が日本人の名前にキレた」
27: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:25:22.70 ID:FpkFq5Eu0
※ ※ ※
「――という事があったんですよ」
28: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:26:09.36 ID:FpkFq5Eu0
「……まあいいとして、何でエチオピアなんだよ」
「国籍なんてどこでもいいでしょ? 最初はパキスタンにしようかと思ったけど、シエルってば国籍をインドにしてなかったから。
それで昨日志貴が食べてたドロワットを思い出してエチオピアにしたの」
29: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:26:50.14 ID:FpkFq5Eu0
何となく……昨日のメシアンでの会話が関係あるんだと考えてたけど……そっか……カレーの方だったか。
あまりに突飛な返答に、頭が追いつかずに処理落ちしてしまっている。
ここは一つ落ち着くために深呼吸でもしよう。
30: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:27:58.55 ID:FpkFq5Eu0
「わたしね、志貴と一緒にいるのがすごく好きなの。
でも志貴が人生で一番多く過ごしている学校という場所を良く知らない。
そこでの志貴をもっと知りたいと思ったの」
「――――――――――」
31: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:28:42.83 ID:FpkFq5Eu0
「前々から気になっていた学校という場所を、人がたくさんいる普段の状態でもっと見たかったのもある。
今日一日は新鮮な事ばかりで、たくさん笑って、困って、考えさせられた。
大勢の人に自分の考えを伝えるにはどうすればいいかなんて、ここに来なければ考える事は無かったと思う」
アルクェイドは楽しそうに――――幸せそうに笑う。
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