31: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:28:42.83 ID:FpkFq5Eu0
「前々から気になっていた学校という場所を、人がたくさんいる普段の状態でもっと見たかったのもある。
今日一日は新鮮な事ばかりで、たくさん笑って、困って、考えさせられた。
大勢の人に自分の考えを伝えるにはどうすればいいかなんて、ここに来なければ考える事は無かったと思う」
アルクェイドは楽しそうに――――幸せそうに笑う。
以前のこいつなら不要だと切り捨てていた無駄を、触れれば壊してしまうんじゃないかと不安に想いながらも、慈しむように愛しむように優しく語る。
「わたしは今、二人が普段過ごす学校という場所の一部になっているんだって感じられて――――人の営みの一部を、少しだけ理解できたように思える」
「――ああ。
理解してもらえたと感じられて、俺も嬉しいよ」
その柔らかな語りに眩しいものを感じて、自然と俺も優しく返事をした。
気づけばついさっきまで言い争っていた先輩も、目を細めてほほ笑んでいる。
こんなに無駄な事を、余分な事を味わって人生を楽しむアルクェイドを見られるのなら……こいつが学校に来るのも、悪くないか。
もちろんこいつが学校に来る事で予期せぬ事態はいくらでも起きるだろうし、その度に俺の心労は積み重なるだろうけど――
「まあ、なんとかなるか」
この笑顔のためならば、なんて事はないに決まっている。
真昼の日差しが部屋に差し込むなかで、太陽に負けぬほど明るく笑う月の化身を見ながら――そう静かに確信した。
……この甘い考えは、二日後に朝からサボらずに出席したとある悪友によって木っ端微塵にされるが、それはまた余談。
〜おしまい〜
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