白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
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130:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:34:54.95 ID:tRJaplXx0
 望むもの、と言われ、千夜はちとせの隣を想う。守るべきもの、と言われ、千夜はちとせを想う。そんなものは分かり切っていて、だから今、くだらない自分が頭を悩ませているのだというのに。

「楽しめるばかりではないでしょう。アイドルという仕事が生存競争である事ぐらい、私だって知っている」
「ああ、大変だな」
「華やかな舞台を夢見ながら、実際は声の一つを上げることも許されず、ただ涙を流す者たちを、私でさえ見てきた。そうなっても背中を押すと?」
以下略 AAS



131:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:38:48.12 ID:tRJaplXx0
 ふつふつと頭痛が始まった。衝動が身体を駆け巡った。

「神様とやらが私を戒めるとすれば、わざわざ塩の柱に変えたりなどしない。硫黄も永遠の火も必要ない。鏡一枚だ。鏡に映る本当の姿を見さえすれば、私には全部が分かる。何を願おうと分不相応だ。何を望む資格もない。
 私がここに居るのは、お嬢様に恩をお返しする、その当然の道理の為だ。お嬢様が望むことならば、応えなければならない。お嬢様が新しい舞台で活躍なさるのなら、よりお側でお支えする為に、私自身も努力をしなければならない。当然の道理だ。私の願うことじゃない。その筈だった。それを……

以下略 AAS



132:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:39:16.36 ID:tRJaplXx0
 ほとんど怒鳴って、机も叩いて、目の前に突っ立つビジネススーツをあらん限りに睨み付けた。
 しかし千夜が危惧したような、例えば怖気を震ったりするような態度を彼はとらず、一言一言を吟味するようにしながら、眉や唇を引き締めて黙っていた。

 暫時の間そうしていて、千夜の呼吸が整った頃、ふと思い出したように「そっか」と言い、彼は顔を和らげた。
「分かるよ。自分を見なきゃいけないってのは大変だな」
以下略 AAS



133:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:40:23.86 ID:tRJaplXx0
「しかも鏡見るだけじゃ駄目なんだ。俯瞰しないとな」
「何が言いたいのです」
「関係性の話だよ。千夜は今、自分の話をしただろ。だけどその白黒の世界には、確かにちとせがいる筈だ。白黒で充分だったのは、お互いを宝石のように守って来たのは、ちとせにも同じ事だったろう」
 彼は言って、文香のガラスタンブラーに指を触れた。

以下略 AAS



134:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:40:51.74 ID:tRJaplXx0
 話を聞いていたのかどうか、あまり分からない感想を述べて彼は、
「アイスコーヒーどう? 紙パックだけど」と言い添えた。
 かぶりを振った千夜に背を向け、給湯室へ向かう。
「戻るにせよ、そうでないにせよ、僕が頭を下げにいくよ。まあ、あの先生には要らない気遣いだろうけど」
「しかし……」
以下略 AAS



135:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:41:46.07 ID:tRJaplXx0
 戻って来た彼は紙パック――アイスコーヒーと、果汁100%オレンジジュース――を手にしながら、黒と蒼、二つのカップに首を傾げた。
「断熱ねぇ。じゃこっちか? でも、ガラスの方が映えるよなぁ」

 千夜は呆れて、
「はあ、まったく幸せですね。そんな事で悩めたものだ」
以下略 AAS



136:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:42:20.79 ID:tRJaplXx0
 ――――

 ――増えたな――

 それを聞いた刹那、千夜は時間が止まったのを感じた。
以下略 AAS



137:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:43:21.34 ID:tRJaplXx0
 
  
 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 
以下略 AAS



138:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:43:48.78 ID:tRJaplXx0
 舞台に参加しない、稽古の場に居合わせてもいなかった杏が、訳知り顔である事に問いを質した。
 杏はしまったという顔をしそうになって、やめた。白く丸い頬を緩ませる。
「『ベイカーストリート・イレギュラーズ』だよ。杏には八千人の部下がいる」
「はあ」
「しかも世界のうち七億人が杏の端末なんだよね。だから分かっちゃった」
以下略 AAS



139:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:44:16.32 ID:tRJaplXx0
「やだなー、DJだよ。リーダーなんてやってらんないし…… ま、なぜか相談を受けちゃったのは確かだよ」スマートフォンを振る。連絡アプリでのやり取りが表示されていた。「人働かせなもんだよね…… ねえ千夜、みんなに心配掛けたね」

 事もなげな調子の声に、胸がぞくっとして、言葉を返せなかった。杏は取り合わず続ける。
「だから杏、《何もするな、気にするのもするな》って言っといたげたよ」
「それは、お世話様でしたね」
以下略 AAS



140:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:44:52.35 ID:tRJaplXx0
 袖を引かれ、宙に浮いた右足が元へ戻った。視線をやると、杏が千夜のポケットをぱしぱし叩いた。
「はい?」
「スマホスマホ」

 言われて取り出すと、軽く操作しても反応がない。電源が落ちていた。そのようにした覚えもなく驚いて、すぐに再起動を試みる。滞りもなく画面は光った。バッテリーの異常ではないようだ。
以下略 AAS



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