136:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:42:20.79 ID:tRJaplXx0
――――
――増えたな――
それを聞いた刹那、千夜は時間が止まったのを感じた。
――ああ、だから――と、光の散らばる思いがした。
ちとせも、覚えてくれていた。クッキーを割った日、《増えたね》と笑ってくれた日を。
だから文香を巻き込んだ。カップが二つになるよう仕向けた。
そういうふうに、また同じ言葉を連れて来た。
やがて虹になる嵐のように、
十二時に残る靴のように、千夜に救いをもたらした。
動悸がした。体温が上がった。深呼吸を試みた。何かを抑えられなくなりつつあった。
――帰りにクッキーを買っていこう。それから一番良いコーヒーを淹れよう。また美味しいと言って欲しい。もう、美味しいと言って欲しい。何度も、何度も言って欲しい。
234Res/183.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20