90: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:08:32.05 ID:LTP9DQ6S0
目が覚める。正しく、朝になっていた。
本当に睡眠薬の効果は絶大で、私は朝まできちんと眠れたようだ。カーテン越しの朝日を感じつつ、私はベッドから起き上がる。
……よいしょ。
体がものすごくだるい。
91: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:09:04.27 ID:LTP9DQ6S0
『実はですね……楓さんのレッスンは、今週いっぱい禁止になってまして』
「えっ」
『……あはは』
92: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:09:44.88 ID:LTP9DQ6S0
「高垣さん、具合はいかがですか?」
「……先週とあまり変わってない、ですね」
一週間が経ち、私はクリニックに来ている。先生がこの前と同じく、にこやかに尋ねてきた。
93: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:10:23.93 ID:LTP9DQ6S0
「なるほど。夜は、眠れていますか」
「あ、はい。いただいた薬がよく効くので、寝付きがよくなりました」
「ああ、それはよかったです。まずは寝ることから始められて、いいと思いますよ」
「……ありがとうございます」
94: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:10:51.56 ID:LTP9DQ6S0
「お出ししている薬で、気持ちが前向きになるものがあるじゃないですか」
「はい」
「それが効いてくると自然に、ちょっとなにかやってみようかな、と、やってみたくなる気持ちが出てきますから。それを待ってからでも遅くないと思います」
「そうなん、ですね」
95: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:11:17.52 ID:LTP9DQ6S0
私は心から、残念に思う。
時間薬と、よく言われたりする。失恋とか。
しかしそれは、なにかを忘れるための時間なのであって、本当に薬なのだろうか。
時間をかけることで、私はPさんを忘れてしまうのだろうか。
96: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:11:49.02 ID:LTP9DQ6S0
私は、薬を飲む。
二週間。特に変わった様子はない。いや、少しだけ変わってきたことがある。
相変わらず睡眠薬で昏倒するように眠るのだけれど、寝付きはよくなったが早くに目が覚めることが増えた。
二時間くらいでぱっちりと。そこからもう一度眠ろうとするのは、とても苦痛だった。
97: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:12:19.35 ID:LTP9DQ6S0
プロデューサーからようやく、ゴーサインが出た。
ちひろさんがたびたび私の様子を確認に来て、今の状態ならとチームに上げてくれたらしい。
心から、安堵した。
98: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:12:45.95 ID:LTP9DQ6S0
「高垣さんは最近、まとまったお休みを取ったとか。どうでした、お休みは」
番組の収録。司会の方からインタビューを受ける。
99: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:13:14.98 ID:LTP9DQ6S0
クリニックに通い始めて二か月。
睡眠はそこそことれているような気がするけれど、仕事のパフォーマンスはさっぱり上がらない。私は少し焦っている。
「先生」
216Res/171.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20