97: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:12:19.35 ID:LTP9DQ6S0
プロデューサーからようやく、ゴーサインが出た。
ちひろさんがたびたび私の様子を確認に来て、今の状態ならとチームに上げてくれたらしい。
心から、安堵した。
「ぜひ! お願いします!」
仕事ができる喜び。私は本当に嬉しかった。
だが、私の喜びは最初からつまずいてしまう。ボイストレーニングは問題なかったものの、ダンスレッスンに問題が発生した。
「高垣。あまり無理するな」
「いえ、もう一度……お願いします」
なんとなく、あくまで感覚的なものでしかないのだけれど、ひとつひとつの所作が一呼吸ずれる気がする。
はた目に見ればまったく問題なさそうなステップも、ベテラントレーナーさんの目はごまかせない。
もちろん、私自身も。
これでいい、これで十分。どうしても自分を妥協させる気にならなかった。
「今日はここまで……高垣、もう少し時間をかけて戻すしかなかろう、な」
「……はい……ありがとう、ございました」
心のもやもやを解決できぬまま、仕事を徐々に戻していく。
そうしたつまずきはあるけれど、仕事をしている間の私は確かに、私らしく感じられる。
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