高垣楓「あなたがいない」
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93: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:10:23.93 ID:LTP9DQ6S0

「なるほど。夜は、眠れていますか」
「あ、はい。いただいた薬がよく効くので、寝付きがよくなりました」
「ああ、それはよかったです。まずは寝ることから始められて、いいと思いますよ」
「……ありがとうございます」

 寝ることを褒められるという、なんとも締まらない体験をする。それだけ私は今、普通と違う状態なのだろう。

「食事はどうですか? 食べられてますか?」
「ええと。あまり食べている、という感じではないですけど……食べるようにしています」
「そうですか。でも食べるようにしているなら、いいんじゃないでしょうか」
「……ところで、先生」
「なんでしょう?」
「実は、私」

 私は、この一週間の行動を告白する。
 せっかく事務所から時間をいただいたというのに、無為に過ごしてしまった気がする。結局自分のためにできることは、なにもなかった、と。
 しかし先生は、こう言った。

「いえ、それでいいんです。今はただ休む、それが必要だと思いますよ」
「え?」
「だらだらと考えもせず、休んだのでしょう?」
「え、ええ……」
「ならそれでいいんです。心が休みを欲しているんじゃないでしょうか」
「そう、ですか」

 私の行動が肯定されて、私は返答に困った。
 はた目から見れば明らかに怠けていて、決して褒められるようなことはないように思えるから。




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