高垣楓「あなたがいない」
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91: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/20(日) 22:09:04.27 ID:LTP9DQ6S0

『実はですね……楓さんのレッスンは、今週いっぱい禁止になってまして』
「えっ」
『……あはは』

 私のレッスンが、禁止? それ、どういうこと?

「あの、どういうことでしょう」
『ごめんなさい、社長から御触れが出てます。楓さんは次の診察日まで完全お休み、です』
「……」

 なんと、この事態は社長さんによるものですか。え、完全にお休み、ってことは。

「あの……私のお仕事は」
『はい。後ろへ延ばせるものは順延、中止できるものは中止、あとどうしようもないものについては代役をお願いしています』
「……はあ」

 私はため息を吐くしかなかった。
 私のスケジュールを空にするために、かなり無理を強いたのだろう。そのことが容易に想像できた。

「私は、なんてことを」
『楓さん、気に病まないでくださいね。これは私たちの意向なんですから』
「でも」
『今の楓さんがベストパフォーマンスを発揮できるかというと、それは難しいだろう、と。それが社長はじめチームの判断です』

 悔しかった。今までの努力が否定されたみたいで、私の心は荒れ狂いそうになる。でも。
 そこまで追い詰められていたこともまた、私の責任。
 結局、自分の行いが自分に返ってきた、そういうことなのだ。

『本当にごめんなさい。でも、楓さんが元気を取り戻せるようにすることが、一番ファンのためになる、私たちのためになる、そういうことなんです』
「……」
『今は自分本位で、心を穏やかに、過ごして欲しい……私もそう思います』

 ちひろさんにそう言われて、でも、と言うことは難しかった。仕方なく、私は現状を受け入れる。

「分かりました。ゆっくり休むことにします」
『はい、そうしてください……あと、時々お邪魔しますから、こっそり自主練習とかはナシ、ですよ?』
「……はい」

 ちひろさんに見抜かれている。私は白旗を上げるしかない。
 こうして、思いがけずすっぽりと、スケジュールが空いてしまった。
 私は、どう過ごせばいいのだろう?

―― ※ ――




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