56: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:41:11.87 ID:QGubcxXe0
「それじゃあ、いただきます」
冷酒器からお猪口へ、お酒を注ぐ。澄んだ命の水をありがたく、頂戴する。
57: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:41:45.02 ID:QGubcxXe0
味覚が安定しない。自分の舌は、どうなってしまったのか。
不安な気持ちが膨らんでいく。
私は慌ててキッチンへ戻り、コップに水を汲む。やわらぎ水で口をリセットし、お酒を呑み始めた。
58: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:42:27.42 ID:QGubcxXe0
翌々日。チームのミーティングでプロデューサーから言われる。
「楓さん」
「はい」
59: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:43:12.95 ID:QGubcxXe0
「心配かけてすいません……ありがとう」
「いえ、チームですから」
プロデューサーが笑う。私の心は晴れなかった。
60: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:43:51.89 ID:QGubcxXe0
ペースダウンを余儀なくされたものの、負荷を軽くしたことが思いもよらず好循環を生む。
私の歌に鋭さが加わったと、評判が上がったのだ。果たしてそれは、本当に負荷を軽くしたおかげなのだろうか?
私には実感がなかった。
私は今までどおり歌ってきたし、なにも変えたところなどない。鋭さと言われても、それがなにを指しているのかさえ、見当もつかない。
61: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:44:32.04 ID:QGubcxXe0
朝。
いつもの気だるさではなく、妙な重苦しさをもって起き上がる。
今日はレコーディングに向けてのレッスンだっけ。目覚めを呼び起こすため、シャワーを浴びる。シャワーの粒がピリピリと肌に痛い。
62: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:45:20.64 ID:QGubcxXe0
※ 今日はここまで ※
ではまた ノシ
63:名無しNIPPER[sage]
2020/09/19(土) 02:19:40.76 ID:gSlMKMxqo
おつ
64: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:23:50.82 ID:+7YhSCXJ0
投下します
↓ ↓ ↓
65: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:25:12.33 ID:+7YhSCXJ0
気が付くと、私はベッドに寝かされていた。見たことのない天井、のわけがなく、ここは私の寝室だった。
「気が付きました?」
66: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:25:39.94 ID:+7YhSCXJ0
少し朦朧とした頭で、清良ちゃんの言葉を反芻する。
そうだ、ここで例えばちひろさんが救急車を呼んだとする。そうすれば私は、どこかの総合病院に担ぎ込まれることになる。マンション界隈は大騒ぎになるだろう。
そして、それをマスコミがかぎつければ。
トップ記事の、できあがり。
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