高垣楓「あなたがいない」
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58: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/18(金) 22:42:27.42 ID:QGubcxXe0

 翌々日。チームのミーティングでプロデューサーから言われる。

「楓さん」
「はい」
「ペースを、落とします」
「……え? どうして?」

 突然のペースダウン発言に、私は驚いた。

「いや、楓さん。どうしてもないでしょう? ……ベテラントレーナーさんから聞きましたよ」

 ああ、そういうことか。
 ひょっとしたらとは思ったけれど、もはやごまかしが許されない状況なのだと、観念するしかなかった。

「楓さんだからということで我々もバックアップに努めていましたけれど……ありていに言えば、楓さん、頑張りすぎ」

 プロデューサーのきつい一言に、チームのみんなが頷く。

「どうも空き時間を見つけては自主練していたそうじゃないですか。そういうところは美徳だと思いたいですけど、さすがに心技体そろってはじめて、そう言えるんじゃないかと」
「……そう、ですね。ごめんなさい」
「いえ、謝って欲しいわけじゃないです。もちろん、我々の当面の目標はライブに設定してますけど、それはまだ先の話です。今から根詰めてどうするんです?」
「……」
「心配なんですよ、我々だけじゃなく、スタッフみんなが」
「……そうですね」

 私はそう答えるしかなかい。




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