高垣楓「あなたがいない」
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113: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:57:55.41 ID:brMXuKjJ0

「楓ちゃん。今度のライブが終わったら、しばらく仕事から離れなさい」
「え? なにを瑞樹さん突然」
「ダメよ。このまま楓ちゃんが走り続けたら、あなた絶対壊れる」

以下略 AAS



114: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:58:41.73 ID:brMXuKjJ0

 息が上がる感覚。私は、頭に血が上るのを感じた。

「なぜ、ですか……それが、いけないんですか」

以下略 AAS



115: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:59:24.36 ID:brMXuKjJ0

「そう、今は泣くの。ひたすら泣いて、彼のこと、想うの」

 誰もが彼のいない世界で、懸命に頑張っているというのに。
 私がPさんを想うことを、許されるはずがない。そう自分を戒めて今まで走ってきた。
以下略 AAS



116: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 22:59:52.09 ID:brMXuKjJ0

 私は、薬を飲む。
 泣きはらして多少は、心が軽くなったかもしれないけれど。日々は変わることなく、流れていく。
 私の調子は一進一退というところで、決して芳しいとは言いにくい。それでもライブはやってくるわけで。

以下略 AAS



117: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:00:38.63 ID:brMXuKjJ0

 ライブ当日。開演一時間前。
 私はいつになく落ち着かなかった。

「おや楓さん。緊張してます?」
以下略 AAS



118: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:01:11.10 ID:brMXuKjJ0

 なにに対して不安になっているのか、私自身認められていない。漠然とした、ちりちりという焦燥感。それでも。
 その時は、やってくる。
 ふとプロデューサーの言葉を思い出す。人間くさい、私。彼らはそういう私が好きなのだ、と。そして、気付く。
 ああ、Pさんもそう言っていた。完璧じゃない、人間くさい私が好きなのだ、って。
以下略 AAS



119: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:01:43.29 ID:brMXuKjJ0

 舞台袖、私は佇む。客席の熱気と緊張が、肌に伝わってくる。ベルが鳴った。

「本日は、高垣楓アコースティックライブにお越しくださいまして、誠にありがとうございます……」

以下略 AAS



120: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:02:11.76 ID:brMXuKjJ0

「本当に今日はありがとうございます……アンコールまで、こうして待っていただいて、嬉しいです」

 わああ、と。沸く客席。そして私に求められている曲、それを私は知っていた。

以下略 AAS



121: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:02:45.05 ID:brMXuKjJ0

 ――渇いた風が 心通り抜ける
 ――溢れる想い 連れ去ってほしい

 シャンソンのように。ピアノの自由律に私は、語り掛けるように歌う。顔を上げ客席を見れば、そこは緑の光の洪水。
以下略 AAS



122: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:03:12.28 ID:brMXuKjJ0

 ――満ちて欠ける 想いは今
 ――苦しくて溢れ出すの 立ち尽くす風の中で

 助けて。
以下略 AAS



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