高垣楓「あなたがいない」
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117: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/21(月) 23:00:38.63 ID:brMXuKjJ0

 ライブ当日。開演一時間前。
 私はいつになく落ち着かなかった。

「おや楓さん。緊張してます?」

 プロデューサーが声をかける。

「ええ、そうですね。なんだかデビュー当時を思い出して」
「そういうもんですか。アリーナ公演もこなした楓さんでも、久々だと緊張するものですか」
「そういうものですよ。ただのアイドル、ですから」
「ま、そりゃそうですね。でも、よかった」
「よかった、ですか?」
「ええ、そういう人間くさい楓さん、僕たちは大好きですから」
「まあ。ふふっ」

 プロデューサーは今の私の状態を、緊張、と呼んでくれる。だが私の心は、緊張とは離れた状態にあった。しいて言えば『不安』
 そう、不安、なのだ。




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