6:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:10:19.17 ID:qe4+sBJv0
「おねえちゃんのおなまえは?」
「私の名前……?よ、ヨハネよ。」
自らを名乗ることなんて何時ぶりだろう。
7:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:10:52.66 ID:qe4+sBJv0
数十分ほど経っただろうか。
時折ちろちろと流れていた清流は、いつの間にか音を立てて流れていた。
「花丸……花丸!」
8:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:11:23.41 ID:qe4+sBJv0
それから数日が経った。
ヨハネの微かな疑問には平穏な日常が降り積もっていく。
幹の上から山を俯瞰し、華美に虫を惹きつける花々を眺め、最近子供を産んだ狼に微笑む日常が。
9:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:12:10.80 ID:qe4+sBJv0
突如さっと太陽を横切る黄色い影が現れた。
威厳を持って地に降り立ったそれは、「天使」と呼ぶにふさわしい姿形をしている。
きょろきょろと辺りを見渡すと、凛と澄んだ声で呼びかける。
10:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:12:47.64 ID:qe4+sBJv0
「けどこれだけは言っておくわ──」
一度そこでマリーは一呼吸おいて──
11:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:13:14.53 ID:qe4+sBJv0
*
12:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:13:54.65 ID:qe4+sBJv0
黒々とした山の麓、街の外れの小さな家からは陽だまりのような灯りが漏れていた。
「花丸や、そろそろ食事ができるから運んでおくれ。」
部屋の窓から夜の山を眺めていた花丸は、後ろを振り返り元気よく返事をする。
13:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:14:29.37 ID:qe4+sBJv0
「ねぇ、おばあちゃん。」
「なんだい?」
継ぎ接ぎだらけのブランケットを被りながら、食事の支度をする自分の祖母に声をかける。
14:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:15:05.86 ID:qe4+sBJv0
しばらくの間、ヨハネとの夢のような遭遇は花丸の心の中で残っていた。
けれども、少しずつ降り積もる日常はヨハネとの出会いの上にうっすらと覆い被さる。
夏、秋と季節は過ぎていく。
15:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:15:35.41 ID:qe4+sBJv0
*
16:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:16:14.93 ID:qe4+sBJv0
「いってきまーす!!」
「花丸!帽子被っていきなさい!」
叫びすぎて思わず咳き込む祖母から薄汚れた白い帽子を受け取るや否や、花丸は子供たちの喧騒の方に駆けだしていく。
74Res/68.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20