13:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:14:29.37 ID:qe4+sBJv0
「ねぇ、おばあちゃん。」
「なんだい?」
継ぎ接ぎだらけのブランケットを被りながら、食事の支度をする自分の祖母に声をかける。
静けさの中で、草が風と擦れ合う音だけが辺りに響いていた。
「この前ね、山で迷子になったとき、お姉ちゃんが助けてくれたんだ。」
「まあ!どこの誰かしら!一度お礼でも言いたいものだわ!」
そんな話はもっと早くにしてほしかったわ、とぶつくさ呟きながら、おばあさんは目を丸くする。
「優しいお姉ちゃんで、おばあちゃんに会うまで送ってくれたずらー!」
「おや、そうなのかい?花丸は1人で降りてきているように見えたんだがねぇ……」
首を傾げるおばあさんを見て、花丸はけたけた笑っている。
「……そりゃ、不思議なこともあるもんだねぇ。」
それだけの言葉を花丸に対して紡ぐ。
「けれど、花丸。一人で森に行くのは危ないからダメだからね。」
嗄れた声で優しく花丸に呼びかける。
顔に深く刻まれた皺には、たくさんの陰が揺らめいて踊っていた。
「あの森には恐ろしい悪魔が住んでいてね、あなたみたいな小さな子が一人で入ると、どこかへ連れ去られてしまうからね。」
まるで演出であるかのように外の風が一瞬強くなり、黒いシルエットの草木はザワザワと騒めき合っている。
年のいった子なら鼻で笑うような脅し文句だが、5つになったばかりの子供を震え上がらせるには充分すぎた。
「おねえちゃんは大丈夫ずら……?帰り道に襲われてないかなぁ。」
「大丈夫よ。あなたを助けてくれるぐらい優しいんだもの。悪魔もきっと見逃してくれるわ。」
優しく頭を撫でられながら、花丸は「さあもう寝なさい。」と急かされる。
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