7:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:10:52.66 ID:qe4+sBJv0
数十分ほど経っただろうか。
時折ちろちろと流れていた清流は、いつの間にか音を立てて流れていた。
「花丸……花丸!」
「あ、おばあちゃんずら!」
前方からおろおろと駆け寄ってくる年配の女性を見つけて花丸はぴょんぴょんと跳ねていた。
「おお……よかった。心配したよ……本当に……」
「あのね、ここまで優しいお姉ちゃんが連れてきてくれたんだ!」
すっかり安心しきったように強く花丸を抱きしめるおばあちゃんの胸の中で、花丸は後ろを指差す。
「……あれ?」
「おやおや、この子は。夢でも見ているのかい?」
髪の毛に着いた木の葉を摘み取り、優しく頭を撫でている祖母をよそに、花丸の目は自分が歩いてきた道に釘付けになっている。
そこには少女の姿などなく、あるのは小川を包み込む木漏れ日だけだった。
*
*
「ふぅ……とっても疲れたわ……」
木々のすぐ上を弱弱しく飛びながら、ヨハネはため息をつく。
(思えば、人間と話したのは初めてね。)
今朝からの非日常の連続で、ヨハネは若干の疲れを感じていた。
寝床である大樹の木陰に横になる。
幾重に折り重なる葉の裏側を眺めながら、ヨハネは物思いに耽っていた。
(どうしてあなたには私の姿が見えるの?)
一番聞きたかった質問が頭の中に思い浮かぶ。
そう。私の姿は人間からは見えないはずなのだ。
それなのに、何故?
浮かんだ疑問は微睡みの中で泡沫のように消えていき、ヨハネは昼寝に引きずり込まれていった。
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