2:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:08:08.89 ID:qe4+sBJv0
どこの国にも言い伝わっているようなお話、幼子への脅し文句。
「あの山には入ってはいけないよ。悪魔が住んでいて、攫われてしまうからね。」
母親に言われた子供は身を震わせて大きく頷くと、そそくさと寝室に向かう。
3:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:08:37.54 ID:qe4+sBJv0
「──んん……」
柔らかな陽光が青々とした木々の犇めく森に遅い朝を告げる。
その中心で、一際大きい大木が暗緑色の両手を広げていた。
4:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:09:07.06 ID:qe4+sBJv0
「だれ……?」
「うわーーー!!!!」
頭のてっぺんから爪先の先まで電気が走ったように驚き、思わず幹の寝床に姿を隠す。
5:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:09:44.05 ID:qe4+sBJv0
数分もすると、ようやく子供は落ち着きを取り戻したようだ。
真ん丸な瞳で不思議そうにこちらを見上げている。
透き通った琥珀のような瞳がとても綺麗だ。
6:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:10:19.17 ID:qe4+sBJv0
「おねえちゃんのおなまえは?」
「私の名前……?よ、ヨハネよ。」
自らを名乗ることなんて何時ぶりだろう。
7:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:10:52.66 ID:qe4+sBJv0
数十分ほど経っただろうか。
時折ちろちろと流れていた清流は、いつの間にか音を立てて流れていた。
「花丸……花丸!」
8:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:11:23.41 ID:qe4+sBJv0
それから数日が経った。
ヨハネの微かな疑問には平穏な日常が降り積もっていく。
幹の上から山を俯瞰し、華美に虫を惹きつける花々を眺め、最近子供を産んだ狼に微笑む日常が。
9:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:12:10.80 ID:qe4+sBJv0
突如さっと太陽を横切る黄色い影が現れた。
威厳を持って地に降り立ったそれは、「天使」と呼ぶにふさわしい姿形をしている。
きょろきょろと辺りを見渡すと、凛と澄んだ声で呼びかける。
10:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:12:47.64 ID:qe4+sBJv0
「けどこれだけは言っておくわ──」
一度そこでマリーは一呼吸おいて──
11:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:13:14.53 ID:qe4+sBJv0
*
12:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:13:54.65 ID:qe4+sBJv0
黒々とした山の麓、街の外れの小さな家からは陽だまりのような灯りが漏れていた。
「花丸や、そろそろ食事ができるから運んでおくれ。」
部屋の窓から夜の山を眺めていた花丸は、後ろを振り返り元気よく返事をする。
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