3:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:08:37.54 ID:qe4+sBJv0
「──んん……」
柔らかな陽光が青々とした木々の犇めく森に遅い朝を告げる。
その中心で、一際大きい大木が暗緑色の両手を広げていた。
枝が絡み合う大木の中は、まるで頑なに夜を保っているかのようだった。
「うーん……よく寝たわね。」
暗がりから声がする。
ぱらりと葉が一枚落ちると同時に、黒い影がすとんと地面に降り立った。
黒く落ち着いた装束に体をすっぽり包み込めるほどの大きな翼。
腰の下からはきめ細やかな尻尾がゆるりと伸びている。
悪魔と呼ぶにはあまりにもしなやかで美しく、しかし天使と呼ぶのは憚られるほど妖しげで威圧的な佇まいであった。
「ちょっと寝すぎたかしら……?」
それは気怠そうにうんと大きな伸びと欠伸を一つすると、大きな翼を一振りし、一気に巨木の頂点に静かに着地する。
尻尾を揺らめかせながら、周りの草木を威圧するように辺り一面を瞰望する。
「今日も平和な一日ね。」
眼下の街の赤焦げた色の屋根を一瞥しながらふっと息を吐く。
何も変わらない平穏な一日のはじめを身体中で感じながら、まるで雲に降り立つかのようにすとんと地に足を着ける。
さぁ、今日も変わらない一日を──
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