2:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:19:36.93 ID:QhrXPTvL0
近頃のわたしは馬鹿なことばかり考えていると思う。
考えても仕方ないことだと頭では分かっているのに、それを意識したときにはもうふわふわとどこかに飛ばされてしまっている。
3:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:20:48.16 ID:QhrXPTvL0
放課後の教室はいやに暑い。
季節はまだ春先だというのに気温が高く、おまけに湿度も高い。ここの地方の梅雨はもっと先のはずなのに。
教室にはクーラーがない。勝手に扇風機をブンブンすると先生に怒られる。となると、まあ窓を開けるしかないよなあ、となる。
4:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:21:27.73 ID:QhrXPTvL0
ぞわり、と。
火照っていた身体に、少しばかりの寒気がさしこむ。
気付いたら、ではなくかなり意識的に、ベランダの手すりに指を掛ける。近付きたい気持ちなのだろうか。
そうしても、なおも、目を細める。それ以外のものを視界から完全にシャットアウトするように。
5:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:22:00.43 ID:QhrXPTvL0
わたしの意思とは無関係に動き出してしまいそうな脚を手で押さえる。
手すりから片腕が離れる。普通逆だろうけど、意識としてはそんな感じで、あれ? となる。
もう片方の手を胸元に持ってきて、そっと押し当てる。
6:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:22:37.40 ID:QhrXPTvL0
わたしは、
彼女と、
彼女のとなりを、もしくは少し前、少し後ろを、走りたい。
7:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:23:45.17 ID:QhrXPTvL0
幼い頃からわたしは足が速かった。
幼稚園のかけっこも、小学校の徒競走も、男女問わず敵はいなかった。
8:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:24:16.14 ID:QhrXPTvL0
好きは主観的なもので得意は客観的なものだ、とそんなことを昔どこかで聞いた。
主観的に見るのは簡単だ。わたしは走ることが好きでも嫌いでもない。さっきの通りスタートとゴールがある競技的な短距離でさえ途中で冷める。
だからマラソンなんてもってのほかだ。でもそんなに嫌いではない。根本的に好きとか嫌いとかそういうものじゃないんだと思う。走ることって。
9:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:25:10.29 ID:QhrXPTvL0
昼休みはたいていひとりでふらふらのそのそと、購買にパンを買いにいく。
適当に目に付いたのを二つ手に取って、ついでに冷ケースから飲み物を取る。
それが半ばルーティン化しているから、購買のお姉さんに顔を覚えられているらしく、小銭を出すときにいつも目が合う。
10:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:25:44.68 ID:QhrXPTvL0
近頃のわたしはちょっと変だから、そんな大して面白くもなんともないことに口元が緩む。
で、数秒経って、何もないところで笑ってるのってやばくないかわたしよ、と真顔になる。
あたりを見回す。友達にでも見られていたらだいぶ変な人としてわたしの認識がアップデートされかねない。
11:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:26:18.13 ID:QhrXPTvL0
自動販売機を通り過ぎ、階段をスルーして、渡り廊下に差し掛かったところで彼女がこちらを振り向く。
今度はじとっとした目だ。こういう目は何度も見たことがあって、また勝手に口の端が緩む。
彼女はわたしの頭からつま先までをつーっと見渡して、ため息をこぼした。
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