5:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:22:00.43 ID:QhrXPTvL0
わたしの意思とは無関係に動き出してしまいそうな脚を手で押さえる。
手すりから片腕が離れる。普通逆だろうけど、意識としてはそんな感じで、あれ? となる。
もう片方の手を胸元に持ってきて、そっと押し当てる。
どくん、どくん、と。
脈が激しく乱れていた。
いけないいけないと思いながら振り向く。
でも、窓越しに見る教室の風景はどこか別世界のもののように思えて、身体の向きを戻す。
なにやってんだろ、ばかみたい。ぺしぺしと顔を叩いてから、もう一度手すりをつかむ。
走りたいなあ、なんて。
……なんて、そんなことを思ってるのかなあ。
ほんとうは思ってなくて、とは言い切れない。思ってはいる。でも言葉にすると意味が変わるように思える。
言葉は外に出してしまえば意味が固定されるし、吐いたぶんだけ軽くなる。
けどまあ、心の中でくらい言葉にしたっていいんじゃないだろうか。
誰も聞いていないし、という何の意味もない納得をして、一応、流れ出さないように口元に手をやる。
多分。多分と言いたい。多分と言わないといけない気がする。
まあいいや、ぜんぜんよくないけど──多分わたしは彼女のことを考えると、走りたいと思ってしまう。
じゃあ走ればいいじゃん、というとそういうことでもない。
って、誰に対しての反論なのか。紛れもなく自分自身だけど。これは一昨日の夜に歯を磨きながら考えた。
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