芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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9: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:02:38.07 ID:hoMUvMIQo

「もしかしたら適当に言っただけかもしれないっすね」
「あまりそういう風には思えないけれど」
「それはわたしも同じっす」

以下略 AAS



10: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:03:10.15 ID:hoMUvMIQo

 私は考える。どうだろう。
 上手く言葉にできなくてもやもやするなんてことは、たしかに、ほとんど日常と言ってしまって構わないほどには――当たり前すぎて、最早気にも留めなくなるほどには――ありふれているような気がするけれど、だけど、その絶対量を相対的に評価できるほどの客観的な道具を私は持ち合わせていない。
 
 だからというわけでもないけれど。
以下略 AAS



11: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:03:39.84 ID:hoMUvMIQo

「『何者か』」

 私は、やはり窓の外を眺めながら言う。

以下略 AAS



12: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:04:25.27 ID:hoMUvMIQo

「それを決めるのだって」
「わたしの役目、っすか」
「うん。あさひの好きなように決めたらいい」
「そんな適当でいいんすか」
以下略 AAS



13: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:04:59.45 ID:hoMUvMIQo

「高校生活はどう? 楽しい?」

 交差点を右に折れる。身体は自ずと左に傾斜する。
 車はもう、事務所前の見慣れた通りに差し掛かっていた。
以下略 AAS



14: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:05:34.25 ID:hoMUvMIQo

 ふと気がつけば、私の右手には傘がある。
 さっきの少女が持っていたものと同じ、水を編んだように青く透明な傘が、望んだわけでもないのに握られている。

 こんなもの、と思った。
以下略 AAS



15: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:06:10.10 ID:hoMUvMIQo

「――」

 翳した傘を叩きつける雨の音は、その勢いを一層増したように思えた。
 あんなにも穏やかに落下していた雨粒は、水色の傘に触れた瞬間、鮮やかに爆ぜ、火花が散るみたいに細かい破裂音をけたたましく耳元で響かせる。
以下略 AAS



16: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:06:38.39 ID:hoMUvMIQo

「着いたよ」

 そんな声が遠くに聞こえて、私は徐に目を開く。
 外の景色は既に流れを止めている。窓の外にはペットショップ、その上が私たちの事務所。
以下略 AAS



17: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:08:22.74 ID:hoMUvMIQo

  *

 そしてすべての音が消える。文字通りにあらゆる音が、世界の秒針さえも巻き添えにして、ちょうど三小節分だけ消える。
 ちゃんと覚えている。その空白は言葉にすると短いようで、実際にはとても長く感じられる。
以下略 AAS



18: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:08:59.91 ID:hoMUvMIQo

 それほど派手に動くような曲じゃない。だけど、これはきっと、感情を込めて表現すべき曲だった。
 エレキギターのカッティングと一瞬の空白を挟んで、いよいよ最後のサビへと流れ込む。
 メロディラインの起伏をなぞるようにして、私の手足は好き勝手な軌道を描いていく。
 いまの私はきっと操られている。この曲が宿した透明な想いの糸に結ばれて、喩えるならマリオネットみたいな感じで、音符の羅列が望んだようにだけ動いている。
以下略 AAS



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