芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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9: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:02:38.07 ID:hoMUvMIQo

「もしかしたら適当に言っただけかもしれないっすね」
「あまりそういう風には思えないけれど」
「それはわたしも同じっす」

 私は軽く頷いて、それから一呼吸置く。

「だけど、うまく言葉にできないっていうか。近いとこまでは来てる気がするんすけど、こう、あとちょっとのところでふっとすり抜けていくんす」
「なるほど。分かりやすい」
「分かりやすいっすか?」
「比較的」

 ぴたりと止まったまま、代わり映えのしない景色はやはり酷く窮屈で、私は運転席のほうを振り返る。
 だけど、私たちの目は合わなかった。
 窓の外へ向けられた表情を、綺麗に整った後ろ髪が教えてくれるわけでもなくて、私は拗ねたみたいにぷいと視線を元に戻した。

「これは勝手な印象だけれど」

 雨音に飽和した車内を、まるで秘密の内緒話をするときみたいに潜んだ声が走る。

「あさひと一緒にいると、感情に理解が追いついていない風にみえる場面が割と多いんだ。そういう瞬間は誰にだって多かれ少なかれあるものだろうけれど」




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