芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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5: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 19:59:47.04 ID:hoMUvMIQo

「ん。誰のこと?」

 暗がりに声が響く。
 視線は横に向けたまま、私は答えた。
以下略 AAS



6: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:00:24.43 ID:hoMUvMIQo

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「何なんすか、それ」
「正しくは、そうであってもいいし、そうでなくてもいい、かな。それはこちら側が決めていいことじゃない」
「言い出したのはそっちじゃないっすか」
以下略 AAS



7: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:00:54.30 ID:hoMUvMIQo

「たとえば、その女の子みたいになりたい?」
「その女の子みたいになりたい、っすか」

 投げかけられた言葉をそのままに繰り返してみる。私に届いたのと同じくらいの速度で。
以下略 AAS



8: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:01:59.39 ID:hoMUvMIQo

「よく分かんないっす」

 結局のところ、私はそう答えるしかなかった。
 分からないものは分からない。こんなことで嘘をついても仕方がない。
以下略 AAS



9: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:02:38.07 ID:hoMUvMIQo

「もしかしたら適当に言っただけかもしれないっすね」
「あまりそういう風には思えないけれど」
「それはわたしも同じっす」

以下略 AAS



10: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:03:10.15 ID:hoMUvMIQo

 私は考える。どうだろう。
 上手く言葉にできなくてもやもやするなんてことは、たしかに、ほとんど日常と言ってしまって構わないほどには――当たり前すぎて、最早気にも留めなくなるほどには――ありふれているような気がするけれど、だけど、その絶対量を相対的に評価できるほどの客観的な道具を私は持ち合わせていない。
 
 だからというわけでもないけれど。
以下略 AAS



11: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:03:39.84 ID:hoMUvMIQo

「『何者か』」

 私は、やはり窓の外を眺めながら言う。

以下略 AAS



12: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:04:25.27 ID:hoMUvMIQo

「それを決めるのだって」
「わたしの役目、っすか」
「うん。あさひの好きなように決めたらいい」
「そんな適当でいいんすか」
以下略 AAS



13: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:04:59.45 ID:hoMUvMIQo

「高校生活はどう? 楽しい?」

 交差点を右に折れる。身体は自ずと左に傾斜する。
 車はもう、事務所前の見慣れた通りに差し掛かっていた。
以下略 AAS



14: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:05:34.25 ID:hoMUvMIQo

 ふと気がつけば、私の右手には傘がある。
 さっきの少女が持っていたものと同じ、水を編んだように青く透明な傘が、望んだわけでもないのに握られている。

 こんなもの、と思った。
以下略 AAS



15: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:06:10.10 ID:hoMUvMIQo

「――」

 翳した傘を叩きつける雨の音は、その勢いを一層増したように思えた。
 あんなにも穏やかに落下していた雨粒は、水色の傘に触れた瞬間、鮮やかに爆ぜ、火花が散るみたいに細かい破裂音をけたたましく耳元で響かせる。
以下略 AAS



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