6: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:00:24.43 ID:hoMUvMIQo
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「何なんすか、それ」
「正しくは、そうであってもいいし、そうでなくてもいい、かな。それはこちら側が決めていいことじゃない」
「言い出したのはそっちじゃないっすか」
「でも、答えるのはあさひだ」
「それは、まあ」
たしかにそうだ。私は小さく頷いた。
雨雲のせいだろう、午後八時の街明かりはやけに心許ない。
助手席の小さな窓は鏡のように私の姿を反射していた。
さっきからずっと前ばかりを向いている運転手の姿もまた、その狭い枠の内側に映し出されている。
風に煽られる雨粒、左右を往復するワイパー、先行車のナンバープレート、遠くで火山でも噴火したのかと疑うほど沈んだ色の雲。
車内から見えるものなんておおよそそれくらいのものだ。
でも、それにしたってすぐに慣れてしまう。面白くない。
だから、かく言う私も、さっきからずっと歩道ばかりを眺めている。
こちらは飽きない。何にせよ、すぐに過ぎ去ってしまうから。
「あさひは」
不意に私の名前が呼ばれる。穏やかな声だった。
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