高山紗代子「敗者復活のうた」
1- 20
182: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:06:51.70 ID:ZRhpxi3E0

 765プロ劇場において、高山紗代子の名前は少しは知られ始めている。
 だがそれは、765プロの新鋭アイドルメンバーの1人としてであり、単独のアイドルとしては「ああ、あの娘か」程度の認知であるのが大半だ。
 無論。紗代子のファンも存在はしている。が、まだこれといって目立った活動実績のない紗代子のファン達も今は「ちょっと気になる娘」「あの娘、可愛いな」「今後に注目をしている」といった人達だ。
 事実、今日は紗代子が主役のセンター公演だが、客席は探せば空席もあるといった状況である。
以下略 AAS



183: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:09:41.07 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「筑波山からの帰り、お話ししたことです」

 プロデューサーの脳裏に、あの時の事が蘇る。
 そう。あの時、紗代子は……

以下略 AAS



184: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:10:13.92 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「誰なんですか? その人は」

P「黒井崇男といってな、あの」

紗代子「961プロの社長さんですね」
以下略 AAS



185: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:10:41.19 ID:ZRhpxi3E0

 幕が上がった。
 舞台袖から見える紗代子の顔も、いい表情にプロデューサーには見えている。
 幕の上がる直前の、少しだけ不安げな顔はもうない。いや、口元には笑みすら見て取れる。
 最初の曲のイントロが流れる。紗代子の歌声をまずは聞かせようと選んだ、バラードだ。
以下略 AAS



186: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:11:33.03 ID:ZRhpxi3E0
 客席は静まりかえっていた。
 誰もこんな始まりを想定していなかった。
 が、呆然としていた観客は、曲の途中で思い出したかのようにペンライトを振り出す。
 そして紗代子が歌い終わると、その場の全員がーーおそらく黒井社長以外はーー熱狂的な拍手をもって彼女を讃えた。
 その熱気は最後まで途絶えることなく、公演は終了した。
以下略 AAS



187: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:12:02.90 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「765プロのオーディションを、落ちた時の私の気持ちです」

P「……」

紗代子「もう駄目なのかな……これで……ここで終わりなのかなって絶望だけがあって……希望や明日も見えなくて……誰かに助けて欲しくて……そんな気持ちを、歌にこめました」
以下略 AAS



188: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:12:41.15 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「ずっと、私を見ていて……いいえ、教えてください! トップアイドルになる夢の叶えかたを!!」

 実際、プロデューサーは内心このままここから去ろうかとも考えていた。
 逃げ出したかった。
 少なくとも紗代子に、顔向けが出来なかった。
以下略 AAS



189: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:13:26.20 ID:ZRhpxi3E0

 公演が終了した後、765プロ劇場はちょっとしたパニックに陥った。
 公演前はまばらだったグッズ売り場に、お客さんが大挙して押し寄せたのだ。
 紗代子関連のグッズは見る間に完売し、急きょ倉庫から在庫が運ばれた。

以下略 AAS



190: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:14:29.14 ID:ZRhpxi3E0
 気がつけば、紗代子が上から顔を覗き込みようにしている。
 衣装から私服に着替え、メガネも髪もいつものように戻している。
 こうしていると、本当に普通の女の子だ。本当にあの絶唱をした娘と同一人物だろうかと、心配になってくるほどに。

紗代子「あ、驚かせてしまってすみません。プロデューサーは、いつも横になって目を閉じて笑ってるなあって思って」
以下略 AAS



191: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:15:32.40 ID:ZRhpxi3E0

     『プロデューサーも敗者だった』



192: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:16:03.25 ID:ZRhpxi3E0
「歌姫様は、ご機嫌ナナメかい」
「ナナメどころか、癇癪玉をぶつけてきてるよ。どうすんだ、もうすぐ本番だってのに、リハーサルもできちゃいない」

 場所はラスベガス。その中にあるベガスを代表する有名ホテル、シーザース・パレス。
 歌姫、とやや揶揄の隠った呼ばれ方をされている少女は、そのロイヤルスイートに立てこもっていた。
以下略 AAS



344Res/278.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice