高山紗代子「敗者復活のうた」
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185: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:10:41.19 ID:ZRhpxi3E0

 幕が上がった。
 舞台袖から見える紗代子の顔も、いい表情にプロデューサーには見えている。
 幕の上がる直前の、少しだけ不安げな顔はもうない。いや、口元には笑みすら見て取れる。
 最初の曲のイントロが流れる。紗代子の歌声をまずは聞かせようと選んだ、バラードだ。
 吐息のような、歌い出しから……

紗代子「あーーー♪」

 突然、紗代子は大声で歌い出した。いや、絶唱だ。
 バックの志保と静香が呆気にとられた。つまり、明らかにリハーサルとは違う歌い出しだ。
 しかし構わず紗代子は手を客席に、そう二階席の方に向けてそのままの声量で歌い出す。

紗代子「私は ここにいます♪
    私は ここで歌っています♪
    ねえ 聞こえますか?
    私が わかりますか?
    私が ここにいます♪」

 冒頭の絶唱で、もしかしたら紗代子は初のセンターで混乱してるんじゃないか。プロデューサーは一瞬、そう思った。必要があれば、曲を止めるつもりだった。
 しかし彼は、戸惑いながらもそれはやめた。
 紗代子は明らかに、意図して絶唱している。
 本来なら、気弱な少女の不安な胸の内を歌った曲が、今紗代子によって強い問いかけの歌になっている。

紗代子「誰も 知らない私♪
    明かりもない ここで♪
    私は あなたの為に歌います♪
    お願い 私を見て♪
    お願い 私を聞いて♪
    お願い 気づいて♪
    あなた♪」


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