186: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:11:33.03 ID:ZRhpxi3E0
客席は静まりかえっていた。
誰もこんな始まりを想定していなかった。
が、呆然としていた観客は、曲の途中で思い出したかのようにペンライトを振り出す。
そして紗代子が歌い終わると、その場の全員がーーおそらく黒井社長以外はーー熱狂的な拍手をもって彼女を讃えた。
その熱気は最後まで途絶えることなく、公演は終了した。
アンコールまでの間に、プロデューサーは紗代子の元に走った。
P「ああいうことをやるなら、せめて俺には事前に報告して欲しかったな」
紗代子「すみません。試してみようと思ったら、もう胸を抑えきれなくて、幕が上がってから、そうだここでやってみようって」
そう言えば紗代子は、この初センター公演で先日気づいた何かをプロデューサーに見せると言っていた。
確かに彼は驚かされた。そして客席全ての人の心に響く歌声だった。
P「結局、気づいた事っていうのはなんだったんだ?」
紗代子「プロデューサーの言ってた事は本当でした。必死な人間の懸命な声は、人の魂に届くって」
P「ああ、俺の声が聞こえたんだったな」
紗代子「でも……じゃあどうすれば必死で懸命な人の声を出せるのかは、山に行っても遭難した人の気持にはなれないのでわかりませんでした。だけど……」
P「?」
紗代子「それなら遭難した人の気持ち、必死な人の懸命な心境ってどんなだろうって考えてたら、思いあたることがありました」
P「なんだ? それは」
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