192: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:16:03.25 ID:ZRhpxi3E0
「歌姫様は、ご機嫌ナナメかい」
「ナナメどころか、癇癪玉をぶつけてきてるよ。どうすんだ、もうすぐ本番だってのに、リハーサルもできちゃいない」
場所はラスベガス。その中にあるベガスを代表する有名ホテル、シーザース・パレス。
歌姫、とやや揶揄の隠った呼ばれ方をされている少女は、そのロイヤルスイートに立てこもっていた。
理由は特にない。
いや、特にないーーと本人は思っている。
だが何だか気に入らない。
思えばなぜ、自分はこんな所にいるのだろう。
本当は、日本でアイドルをしているはずだった。
いや、別に日本でやると決めていたわけではないが、それでもアメリカに来るつもりなどなかった。
見込まれ、条件を出され、それに両親がのったというだけのことだ。自分にはどうすることも出来なかった。
しかしそれとても、それはそれで別にいいだろう。自分はアイドルになりたかったのだから。今も自分が歌えば、会場は熱狂し、ファンは日に日に増えている。
歌うたび、会場は大きくなっている。
そして今日の会場が、コロシアム・アット・シーザーズ・パレス。名にし負う、世界的に有名な劇場だ。
本来ならば、申し分のない……いや、名誉に思えるはずのこの会場でのコンサートにも気乗りがしない。
彼女は、先ほど自分で蹴飛ばしたイスを引きずってテーブルの前に戻すと、いつもの儀式めいた行動に入る。
カタカタカタカタ
検索結果『たかやまさよこ アイドル』……107件HIT
「えっ!?」
彼女は思わず立ち上がった。
これまで何度も検索をして、その都度落胆をしていた検索結果。それが今夜、期待もせずに習慣のように検索した結果は、思わぬ結果を表示していた。
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