193: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:16:34.26 ID:ZRhpxi3E0
「よー……ちゃん?」
震える指先が、ヒットした検索結果の一番上を開く。
そこにはあの765プロの新入アイドルとして、高山紗代子の名とプロフィールが掲載されている。
「よーちゃん……よーちゃんだ! アイドルに……なったんだ!! やっぱり私との約束、忘れていなかったんだ!!!」
涙が溢れ、滲むディスプレイを彼女は読み進む。
日本では有名なライターの書いた、高山紗代子の初センター公演の記事だ。
「新人とは思えない見事な歌声は、観客全員の心をいっぺんに掴んでしまった。いや、掴んで激しく揺さぶってみせた……冒頭からの絶唱は、我々に対する呼びかけだった……この日この公演をもって、彼女ーー高山紗代子は一躍、歌姫として我々の記憶に残るアイドルになった……公演後、765プロ劇場の売店とその倉庫は、売る物を何もなくし文字通り空っぽになった。いや、彼女の歌声が空っぽにしたのだ……」
文章を指でなぞりながら、声を出して彼女は記事を読んだ。
記事は、あの子を絶賛していた。
読み終えた少女は、笑みと燃えるような瞳で立ち上がった。
「負けないよ……よーちゃん」
鍵を開け、ドアから出てきた少女にプロモーターである、コーエンは苦言を述べようとする。
が、それより早く彼女は口を開く。
「さあ、私を歌わせなさい」
コーエンの顔はにがり切る。が、そもそもそれこそが彼の目的であり仕事なのだ。
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