177: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:01:35.13 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「なんだかすみません。ノリの軽い家族で」
P「いや、ごちそうになった」
178: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:02:15.15 ID:ZRhpxi3E0
『歌声は魂に届いた』
179: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:04:39.20 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「き、君!?」
765プロ社長の高木順二朗が、目を剥いて驚いた後、心底嬉しそうに両手を開く。
高木社長「ついに君は、あそこから出てきてくれたんだね。いや、待っていたよ」
180: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:05:18.23 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「まあそれは、2人の問題だ。高山紗代子君は、確かに目的であるトップアイドルにちゃんと向かっている。あの娘の望む通りに」
P「そうですとも。ギブアンドテイクだ。お互いがお互いを利用して、何が悪いというんです!?」
高木社長「……ひとつだけ、君に言っておこう」
181: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:06:17.11 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「先程も言っただろう? これは経験則だよ。そしてそのいつかがやって来た時に、君はプロデューサーとしての真価が問われるだろう」
P「……お言葉は、覚えておきます」
高木社長「うむ。それはそうと、気になることがあるんだが」
182: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:06:51.70 ID:ZRhpxi3E0
765プロ劇場において、高山紗代子の名前は少しは知られ始めている。
だがそれは、765プロの新鋭アイドルメンバーの1人としてであり、単独のアイドルとしては「ああ、あの娘か」程度の認知であるのが大半だ。
無論。紗代子のファンも存在はしている。が、まだこれといって目立った活動実績のない紗代子のファン達も今は「ちょっと気になる娘」「あの娘、可愛いな」「今後に注目をしている」といった人達だ。
事実、今日は紗代子が主役のセンター公演だが、客席は探せば空席もあるといった状況である。
183: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:09:41.07 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「筑波山からの帰り、お話ししたことです」
プロデューサーの脳裏に、あの時の事が蘇る。
そう。あの時、紗代子は……
184: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:10:13.92 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「誰なんですか? その人は」
P「黒井崇男といってな、あの」
紗代子「961プロの社長さんですね」
185: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:10:41.19 ID:ZRhpxi3E0
幕が上がった。
舞台袖から見える紗代子の顔も、いい表情にプロデューサーには見えている。
幕の上がる直前の、少しだけ不安げな顔はもうない。いや、口元には笑みすら見て取れる。
最初の曲のイントロが流れる。紗代子の歌声をまずは聞かせようと選んだ、バラードだ。
186: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:11:33.03 ID:ZRhpxi3E0
客席は静まりかえっていた。
誰もこんな始まりを想定していなかった。
が、呆然としていた観客は、曲の途中で思い出したかのようにペンライトを振り出す。
そして紗代子が歌い終わると、その場の全員がーーおそらく黒井社長以外はーー熱狂的な拍手をもって彼女を讃えた。
その熱気は最後まで途絶えることなく、公演は終了した。
187: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 15:12:02.90 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「765プロのオーディションを、落ちた時の私の気持ちです」
P「……」
紗代子「もう駄目なのかな……これで……ここで終わりなのかなって絶望だけがあって……希望や明日も見えなくて……誰かに助けて欲しくて……そんな気持ちを、歌にこめました」
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