154: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:32:35.50 ID:ZRhpxi3E0
小鳥「ふう……わかりました。ちょっと紗代子ちゃんのお家に電話してみますね」
『おねがいします』
またしても気の遠くなるような時間が過ぎる。
155: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:33:48.62 ID:ZRhpxi3E0
なんという無謀なことを!
プロデューサーは、部屋を飛び出していた。
自分が余計な話などしたから!!
素直で、そしてなんでも全力でいつも要求に応えてくれる彼女を、埒も根拠もない話で危機に追いやってしまった!!!
息を切らしながら走り、飛び込むように帰宅した彼は、押入にしまってあった登山用具を引っ張り出すと、車に飛び乗った。
156: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:34:39.84 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「意外とあっという間でしたね。男体山の頂上って」
北上麗花「うーん。今日は初心者の紗代子ちゃんと登るんだし、御幸ヶ原の筑波山頂駅までケーブルカーで来たからね」
紗代子「ありがとうございます。急に山に行きたいなんてお願いして、申し訳ありませんでした」
157: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:35:16.11 ID:ZRhpxi3E0
P「どこだ……紗代子……紗代子ーーー!!!」
158: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:35:55.16 ID:ZRhpxi3E0
一瞬、紗代子はハッとすると進む先、頭上の女体山を見上げた。
紗代子「プロ……デューサー?」
麗花「紗代子ちゃん? どうしたの?」
159: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:38:56.04 ID:ZRhpxi3E0
麗花「紗代子ちゃんのプロデューサーさんって、どんな人なのかな?」
紗代子「きっと私と違って、自信に満ちあふれた人じゃないかなって思います」
麗花「それはどうして?」
160: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:39:59.74 ID:ZRhpxi3E0
かつての山男とはいえ、そのブランクは深刻だった。まして彼は、ここ暫くはろくに部屋から出てすらいなかったのだ。
女体山頂を目指すコースは、かなりの急勾配だ。それを彼は、必死に進んでいく。
P「紗代子……今、行くぞ……紗代子……」
161: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:42:15.83 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「プロデューサー……ですか?」
P「紗代子……!」
どこにこれほどの元気が残っていたのかという勢いでプロデューサーは立ち上がると、肩を掴んだ。
162: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:43:37.78 ID:ZRhpxi3E0
P「なんだ……俺の早トチリか……良かった……」
紗代子「プロデューサー、もしかして私を心配して来てくれたんですか?」
プロデューサーの傍らに、紗代子は腰を下ろす。その顔つきは、心配と申し訳なさがない交ぜになっている。
163: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:44:56.58 ID:ZRhpxi3E0
P「いや、無事で何よりだ……」
青空がプロデューサーの目に映る。確かにいい天気だ。
もう人前に出ることもない。そう考えていた自分が、気がつけばここまで夢中でやって来て、空を見上げている。
それがなんだか可笑しかった。無性に可笑しかった。
164: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 14:45:22.08 ID:ZRhpxi3E0
麗花「じゃあ紗代子ちゃんは、お迎えに来た白馬の普通の人にお任せしちゃいますね」
P「べ、別に俺は1人で帰るつもりだ……が」
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